阪神が弱い。地元甲子園での巨人戦6連敗(2016年7月20日)にファンは落ち込んだ。真夏の逆襲があるのか。
「甲子園のファンに申し訳ない。いい試合を見せないといけないのに...」
阪神の金本知憲監督は20日の巨人戦に完敗した後、元気のないコメントを発した。
巨人のピンチを救う役割
この3連戦は1-2、1-6、2-6。第2、3戦は勝負にならなかった。これで地元での巨人戦は1分けを挟んで6連敗。身内の前で恥をさらしたようなものである。
いうまでもなく、阪神-巨人は伝統の一戦として位置付けられ、他のカードとは格が違う商売になるカードである。ところが今年の阪神は、巨人のピンチを救う役割を果たしている。
7月初め、巨人は借金5で東京ドームに阪神を迎え、2連勝。第3戦は落としたものの、一息ついた。前半戦を終えたとき借金1だったが、後半戦の最初のカードとなった阪神に3連勝し、貯金生活に入った。
阪神は巨人を助け、自らは最下位に沈んだ。
「阪神は、巨人だけには互角で戦うことが使命となっている。だから伝統の一戦ともてはやされるのだが、これでは、ただ古いだけの戦いだ」
OBからこんなため息がもれるほど、今の阪神は情けない状態にある。
阪神ファンは球団歌「六甲おろし」を得点したときや勝ったときに大合唱するのだが、20日の試合では9回の攻撃が始まる前に、スタンドが一丸となって歌った。激励、鼓舞の合唱だった。ファンの心情がよく表れているシーンとなった。
開幕前には優勝候補に
かつての阪神ファンは厳しく荒っぽかった。甲子園で3連敗でもしようものなら、大勢のファンが選手出口で待ち構え、抗議の大声を張り上げた。窮余の策として球団は監督を前面に出し、拡声器を持った監督が外に出てふがいなさを謝り、頭を下げた。
それを思えば現在のファンは常識的といえよう。
今シーズンの阪神は金本新監督を迎え、人心一新を図った。キャンプでは厳しい練習を行い、開幕前には優勝候補に挙がった。昨(15)年3位だったから飛躍を期待したファンは多かったと思う。
序盤戦は上位を維持。ところが6月5日の勝率5割を最後にずるずると後退し、1か月後には借金10、そしてくだんの巨人戦全敗で今季最多の借金13まで落ち込んだ。
この間、期待した藤川球児の先発失敗、救援に戻して成果なし、とか、開幕前に期待した若手の伸び悩みなど、思惑がことごとく外れた。大量点を失いながらエース藤浪晋太郎を交代させず、チームへのカンフル剤としたさい配も批判を浴びる裏目となった。
「1年生監督としてはつらい試練だと思うが、どうしていいのか分からないのではないか。現役時代は鉄人とか兄貴といわれてきた男だけに、ままならない現状にいらついていると思う」
担当記者も同情的だが、勝負の世界は数字だけ。やはり阪神が勝たないとペナントレースは盛り上がらない。戦力の弱体はあるものの、真夏の逆襲をファンは待っている。(スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)