開幕前には優勝候補に
かつての阪神ファンは厳しく荒っぽかった。甲子園で3連敗でもしようものなら、大勢のファンが選手出口で待ち構え、抗議の大声を張り上げた。窮余の策として球団は監督を前面に出し、拡声器を持った監督が外に出てふがいなさを謝り、頭を下げた。
それを思えば現在のファンは常識的といえよう。
今シーズンの阪神は金本新監督を迎え、人心一新を図った。キャンプでは厳しい練習を行い、開幕前には優勝候補に挙がった。昨(15)年3位だったから飛躍を期待したファンは多かったと思う。
序盤戦は上位を維持。ところが6月5日の勝率5割を最後にずるずると後退し、1か月後には借金10、そしてくだんの巨人戦全敗で今季最多の借金13まで落ち込んだ。
この間、期待した藤川球児の先発失敗、救援に戻して成果なし、とか、開幕前に期待した若手の伸び悩みなど、思惑がことごとく外れた。大量点を失いながらエース藤浪晋太郎を交代させず、チームへのカンフル剤としたさい配も批判を浴びる裏目となった。
「1年生監督としてはつらい試練だと思うが、どうしていいのか分からないのではないか。現役時代は鉄人とか兄貴といわれてきた男だけに、ままならない現状にいらついていると思う」
担当記者も同情的だが、勝負の世界は数字だけ。やはり阪神が勝たないとペナントレースは盛り上がらない。戦力の弱体はあるものの、真夏の逆襲をファンは待っている。(スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)