芥川賞や直木賞などを運営する日本文学振興会が新聞に載せた広告について、アニメを侮辱しているのではないか、といった疑問や批判がネット上などで相次いでいる。
「まったくそういう意図はなくて、小説などが必ずしも皆に読まれていない危機感を真正面から訴えているつもりなんですが...」
「こんなんだから衰退すんじゃねえの」
日本文学振興会の担当理事は、J-CASTニュースの取材に対し、困惑した様子でこう明かす。
振興会の広告「人生に、文学を」は、大手新聞の2016年7月20日付朝刊各紙の1つの面全体を使って大きく掲載されたほか、ホームページの特設サイトでもアップされている。物議を醸したのは、次のフレーズだ。
「文学を知らなければ、目に見えるものしか見えないじゃないか。文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)」
特設サイトや報道によると、振興会は今後、作家を招いた文学教室を大学で年3回ほど開くなどするといい、広告には、新聞各社を含め38社が賛同者として名を連ねている。
ところが、ネット上では、「アニメを見ても人生を想像できない」と言っているとも読み取れるなどと憶測を呼び、炎上状態になった。その後、侮辱する意図はなかったとの振興会側のコメントが一部で報じられたが、疑問や批判は止んでいない。
「それが侮辱にならないと思うなら、それこそ貧困な想像力と言わざるを得ない」
「つもりなくても心のどこかで見下してるのが滲み出てる」
「こんなんだから衰退すんじゃねえの」
この広告に対し、新聞社がなぜ審査で通し、賛同までしているのか、といった疑問も出ていた。
「アニメだけでいいのかと言いたかった」
日本文学振興会によると、電話やメールなどでも7月21日夕までに2、3件は苦情が入っている。「『文学が上位』『アニメは低劣』と言っている感じがする」「上から目線のような気がしてとても不快だ」といったものだそうだ。
これに対し、前出の振興会担当理事は7月21日、次のように釈明する。
「そのような読み方があることを初めて知り、目から鱗でとても驚きました。それを察知できなかったことは、恥ずかしく思っています。広告の文面は、アニメがダメということではなく、文学には、アニメでも表現できない刺激があり、読まなくていいんですかという意味で載せました。アニメでも人生を想像できますが、それだけで満足してよいのでしょうかということです」
文学は元気がなく、出版界は低調で本が売れない一方、アニメは面白いものが多く、海外の人からも喜ばれているとして、強い表現手段を持ったライバルと捉えているとも言う。
新聞社の審査を通ったのは、広告の文面が差別や蔑視に当たらないと判断されたからだとしている。
今後について、担当理事は、「ご指摘を真摯に受け止めて、何らかの対応をしたいと考えています。具体的なことは、これから検討していきます」と言っている。