東京都知事選(2016年7月31日投開票)に立候補しているジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)の過去の女性問題疑惑を「週刊文春」最新号が報じた問題で、鳥越氏は7月21日朝、民進党都連の選対会議で「週刊誌などで書かれていることは、一切事実無根」などと文春側を非難した。同じ頃、弁護団は名誉棄損と公選法違反の疑いで東京地検に告訴状を提出した。
選対会議では、鳥越氏は「私は週刊誌の仕事をしていたから分かるが...」と前置きしながら、今回の記事は「どう見ても、ちょっと異常」で、「政治的な力が働いているとしか思えない」とも推測している。鳥越氏が「サンデー毎日」の編集長を務めていた1989年、宇野宗佑首相(当時)の不倫問題をめぐる告発記事を特報し、結果的に退陣に追い込んだことは有名だ。いわば政治家のスキャンダル記事の手の内を知り尽くしていたはずだったが、選挙期間中に自身に関する女性スキャンダルが掲載されるという皮肉な事態に発展している。
「愛人になってくれたらこれだけ出す」と三つ指
鳥越氏の陣営は、(首都圏などでの)発売前日の7月20日夜、文春編集部に抗議文を送り、刑事告訴に向けて準備を進めていることを発表していた。21日午前の会合では鳥越氏自身が
「私は週刊誌の仕事もしておりましたので、分かりますけれど、どう見ても、ちょっと異常ですね」
「政治的な力が働いているとしか思えない」
「週刊誌等で書かれていることは、一切事実無根」
などと主張し、改めて潔白を訴えた。「週刊誌の仕事をしていたので分かる」と鳥越氏自身が述べているとおり、鳥越氏は自らが暴いた女性問題の記事で時の政権を退陣に追い込んでいる。
鳥越氏は1988年4月にサンデー毎日編集長に就任した。それから1年ほど経った89年6月3日に宇野内閣が発足、それから3日後に発売されたサンデー毎日に、宇野氏の元愛人女性による告白記事が掲載された。記事は、宇野氏が女性に対して「もし自分の愛人になってくれたら、これだけ出す」と、相手の女性の指3本をにぎった、という内容で、月額30万円で事実上の愛人契約を結んでいたというものだ。その後、米ワシントン・ポスト紙も報じたため、国会質問でも取り上げられるなど、またたく間に騒ぎは広がった。これが影響して7月の参院選で自民党は惨敗し、宇野内閣は退陣に追い込まれた。