「1兆円」の都税を地方に流出させた過去
だが、そんな増田氏の切り札ともいえる「実務能力」について、都知事としてはどうなのか、という指摘も相次いでいる。
まず懸念されているのは、1995年から3期12年つとめた岩手県知事時代に、県の公債(借金)を約7000億円から約1兆4000億円に倍増させた点だ。加えて、地方自治運営において重要な「議会との関係」も決して良好とはいえなかったようだ。07年4月26日付の河北新報では、伊藤勢至県議会議長(当時)の
「知事と議会は『車の両輪』と言いながら、(中略)最初に結論ありきで、両輪として扱われたことはなかった」
というコメントを紹介している。こうした知事時代の「実績」を踏まえ、ネット上などでは「何が実務派なんだか」との批判も飛ぶ。
さらに、総務相時代には東京など大都市の法人事業税の一部を地方に再分配する「地方法人特別税」を打ち出していた。08年に導入されたこの税制改革により、東京に本来入るはずだった税収のうち、累計で約1兆円(14年度まで)が地方に流出した。
この件について、11日の出馬会見で、「都民の利益を逸した」と厳しい質問が飛ぶと、増田氏は「東京都のほうから見れば苦渋の選択」だったと、都にとっては不利益な税制だったことを認めた上で、
「(税制改革は)緊急的な対応として行わなければならなかったと思っております」
との見解を示している。
知名度の低さから浮動票の獲得合戦では劣勢に立つ増田氏だけに、推薦している自民、公明の与党の支持層をどれだけ取り込めるかがカギになる。そのためにも、自らが打ち出してきた「実務能力」に対する疑問の声を、これからの選挙戦の中で払拭できるかどうか。