発達障害の1つである注意欠陥多動性障害(ADHD)になっている人が大人にも多いことが最近、明らかになっている。J-CASTヘルスケアでも、2016年7月18日付「発達障害は大人にも発症する 『部屋を片付けられない人』はご注意」で報道した。
そのADHDがかなり重い人でも1日に1回20分程度の運動を続ければ、気持ちを明るくし、やる気の向上につながるという研究がまとまった。
職場や家庭で周囲の人と衝突し、悩みを抱える
研究をまとめたのは、米ジョージア大学のパトリック・オコーナー教授らのチーム。米のスポーツ医学誌「メディカル&サイエンス・イン・スポーツ&エクササイズ」の2016年6月号に発表した。
ADHDは、落ち着きのなさや衝動的な言動、注意力不足などを特徴とする発達障害。従来は、小学校入学時あたりに発症、中学校入学の頃には大半の子どもの症状が消えるとされてきたが、最近は、成人後も続く人が多く、また、新たに成人後に発症するタイプがあることがわかってきた。職場や家庭で周囲の人と衝突し、悩みを抱える人が多い。
オコーナー教授らは「運動が気分を高揚させ、前向きな姿勢になる手助けとなる」という先行研究が多いことに注目、ADHDの患者にも効果があるか確認したいと考えた。そこで、重度のADHDと診断された18~32歳の男性32人を対象に実験した。
まず、ADHDの重症度を判定する時に使う2つのテストを行なった。持続的に作業できるかを調べる「CPT」という集中力のテストと、ミスなく作業を行なえるかを調べる「BVT」という注意力のテストである。その後、20分間、中程度の強度でエアロバイクをこいでもらい、もう一度同じテストを行なった。
数日後、運動ではなく20分間の休息をはさみ、同じテストを行なった。合計4回の各テストの後に、アンケート方式でテストに対するやる気や疲労、気分、注意力の有無などを聞いた。また、脳波を測定し気分の高揚や集中力の度合いを調べた。
さほど面白くない自転車漕ぎでも気分が前向きに
その結果、参加者全員が、エアロバイクをこいだ後に行なったテストの場合のみ、アンケート調査で不安や疲労、拒否感がなく、やる気を感じ前向きな気持ちで取り組めたと答えた。また、脳波検査でも同様な結果を示した。ただし、テストの成績は、運動をした場合と休息をした場合と特に変わりはなかった。
今回の結果について、オコーナー教授は「たった1回20分間の運動、それも実験室でエアロバイクをこぐという、さほど面白くない運動でもエネルギッシュな気分にさせる効果があることが確認できました。これがもっと楽しい、外で行なう運動ならさらに効果があがるでしょう。ADHDの運動療法の確立を目指したい」とコメントしている。