ソフトバンクグループが、英国の半導体設計大手のアーム・ホールディングス(HD)を買収する。
日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)金額としては、同社が2013年7月に米国の携帯電話会社のスプリントの買収に投じた216億ドル(約1兆8000億円、当時)を上回り、過去最大となる。
スマホのCPU、「ARMアーキテクチャ」がほぼ独占
ソフトバンクが買収する英国の半導体設計大手、アーム・ホールディング(HD)は1990年設立。米アップルのiPhoneや、多くのAndroidスマートフォンのCPU(中央演算処理装置)がARMアーキテクチャをベースにしており、現在、世界の約300社に850以上のプロセッサライセンスを販売。すべてのARMベースのチップについて、ロイヤリティを徴収している。スマートフォン向けCPUや通信用半導体のシェアでは、ほぼ独占状態という。
ソフトバンクは2016年7月18日、そんなARMの株式14億1200万株を約240億ポンド(3兆3000億円強)で買収すると、過去最大の「巨額買収」を発表した。
1株あたりの取得額は、15日終値(11.89ポンド)に約43%を上乗せした17ポンド。買収額のうち、7割にあたる167億ポンドは、同社が6月以降、中国のインターネット通販のアリババ集団やフィンランドのゲーム大手スーパーセル、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなどに立て続けに売却した株式を元手とする手元資金から拠出。残る73億ポンドは新規の借入金をあて、みずほ銀行と最大1兆円のブリッジローン(つなぎ融資)契約でまかなう。買収は9月30日までの完了をめざし、完全子会社化する。
7月18日、ロンドン市内で会見した孫正義社長は「(ARMは)この10年来、ずっと考えてきた案件。創業以来、もっともエキサイティングな日になった」と話し、ARMの事業を「中核的事業」と位置付けた。
あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の可能性について、孫社長は興奮ぎみに「自動車やインフラなどあらゆるものがインターネットにつながるようになる」と語った。「今はまだ始まりにすぎない。IoTは人類史上もっとも大きなパラダイムシフトになる」と指摘。ソフトバンクとARMが「IoTの時代の中心的役割を果たす」と、胸を張った。