【楽ラクワンポイント介護】(Eテレ)2016年6月24日放送
「車の運転をやめてもらうには」
高齢者による自動車事故が多発している。なかには、事故を起こした運転者が認知症の疑いがあると報じられた事例も少なくない。
自分が認知症だと自覚しないままハンドルを握り続けたら、危険な事態を引き起こしかねない。少々強引であっても、安全のためには運転をやめてもらうしかないだろう。
本人には申し訳ないが、運転できない理由を「つくる」
番組に登場した介護福祉士の和田行男さんは、認知症の高齢者による運転の危険性を指摘したうえで、やめてもらうには「『うそも方便』しかないかなと思っているんです」と話した。
ある夫婦の母親は、毎日車で外出しているが、どうも様子がおかしい。車が傷だらけになっていると妻が気づいたのだ。夫も「そういえば最近、何回も同じことを聞くなあ」と口にした。楽しみにしていた孫の運動会も、当日すっかり忘れていた。
心配になった夫婦が、母親に運転をやめるよう促した。だが本人は全く聞き耳を持たず、今日も車で出かけてしまった――。
和田さんは、そもそも車の運転は複雑な動作がいくつもからみ、瞬間的な判断が求められる点を指摘したうえで、認知症になると情報処理能力が弱まるため、運転するのは危険だと話した。では、この母親のようなケースでは、どう説得すれば本人が理解するだろうか。
和田「本人には申し訳ないが、方便を使わせていただく」
ひとつは、「運転ができない理由をつくり、本人に伝える」。和田さんが挙げたのは、82歳の高齢者ドライバーの例だ。自分では年齢を「70歳」だと思い込んでいた。そこで、周囲の人がこぞって「70歳になったら運転してはいけなくなったよ」と伝え続けた。時間の経過とともに高齢者本人が「70歳は運転してはいけないのだ」と言い出したそうだ。
「エンジンがかからない」と故障で修理に出す
もうひとつは、「車が動かない、車がない状況を作り、諦めてもらう」。例えば、高齢者が車のエンジンをかけようとしても、かからなければ動かしようがない。その車を修理に出せば、車に乗れなくなる。本人も「故障なら仕方がない」と納得するだろう。
「うそ」をつくのはもちろん心苦しい。だが、万一事故を起こせば本人だけでなく、大勢を不幸にしかねない。和田さんは、心を「鬼」にしてでも認知症の高齢者の運転はストップさせていく必要があると話した。