東京都知事選(2016年7月31日投開票)をめぐる自民党東京都連の締め付け策が、思わぬ形で「ブーメラン」になりかねないとの指摘が出ている。
都連が所属議員に出して通達では、議員本人のみならず親族が競合する候補を応援した場合も「処分」の対象になることをうたっている。だが、よりによって都連会長を務める石原伸晃氏(59)の弟でタレントの石原良純氏(54)が、テレビ番組で野党統一候補の鳥越俊太郎氏(76)について、「応援」にあたる発言をしたのではないかという指摘が出たからだ。
猪瀬元知事「親族を含む、に苦笑。北朝鮮じゃないんだから」
自民党東京都連は増田寛也氏(64)の擁立を正式に決めた7月11日、石原伸晃会長や内田茂幹事長名で「都知事選挙における党紀の保持について」と題する文書を出した。この文書では、(1)党員は党の公認・推薦候補者を応援し、それ以外の候補者を応援しないこと(2)党員は反対党の候補者を応援したり、自民党公認・推薦候補者を不利に陥れる行為をしたりしないこと、を求めている。
文書の中で特に異例なのが、
「各級議員(親族等含む)が非推薦の候補を応援した場合は、党則並びに都連規約、賞罰規定に基づき、除名等の処分の対象になります」
などと親族にまで「締め付け」の範囲を広げていることだ。猪瀬直樹元知事は、この文書の画像をツイッターで公開し、
「親族を含む、に苦笑。北朝鮮じゃないんだから」
と書き込んだ。
石原良純氏の「発言」は、告示前日の7月13日にフジテレビで放送されたフジテレビ「バイキング」で、司会者から鳥越氏の出馬について感想を求められる中で出た。
良純氏は、鳥越氏が出馬会見で
「(参院選の結果から)少し私は自分なりに流れを少し変える、元に戻すような力になれば。それを東京都というところから発信できれば素晴らしいなと思った」
などと話したことと、父親の石原慎太郎元知事が在任中に「東京から国を変える」というスローガンを掲げていたこととのつながりを指摘した。その上で、良純氏は
「最初はあの時、『何をこの人は(=慎太郎氏、編集部注)言ってんだ。何を急に言い始めたんだろう』って思ったけれど、やっぱり東京というのは、それだけ世界を含めて日本、世界に発信できる力がある。その中で鳥越さんが、まずそう思われた」
と、両者が東京の発信力の高さに着目したことに言及した。さらに鳥越氏について、このように述べた。
「それに違和感を持つ方もいるが、まぁ、僕は東京の力というのはそういうのがあるし、そういう中で物申したいということで、出られたんだろうなと。その後に政策については、今後細かいことについてはアレして(詰めて)いく、今はとにかく出馬会見だけということで、おっしゃられたけれども、確かに鳥越さんというものの今までのことを見てきた方は、ひとつその信頼感を持たれる方が多いんじゃないですかね」
伸晃氏「家族まで関係するとか、そういうことはない」
つまり、石原氏は大筋では(1)鳥越氏は東京の発信力に着目して出馬を決めた(2)出馬会見では細かい政策は出なかったが後で詰めるらしい(3)鳥越氏の今までの行動を見てきた人の中では信頼感を持つ人が多いのではないか、といったことを発言している。この発言内容が、ただちに鳥越氏を「応援」しているかどうかは微妙だが、ネット上では、これを「応援」だと受け止める「まとめサイト」が複数出現している。
これに対し、伸晃氏は7月13日午後に出演したTBSラジオの「荒川強啓 デイ・キャッチ!」の中で、
「家族まで関係するとか、そういうことはない」
「家族が除名になるなんてことは、今まで1人もいないし、そんなこともない」
とも述べている。この発言が良純氏の発言を念頭に置いているかどうかは明らかではないが、通達の「親族等含む」をめぐる処分が行われる可能性を事実上否定した形だ。
すでに実際の「造反」も起きている。都連への推薦願を取り下げて出馬した小池百合子元防衛相(64)が7月14日に行った演説には、若狭勝衆院議員(比例東京ブロック)も参加。処分される可能性について問われると
「党が除名するというならしようがない」
と話した。