「もう滋賀県行かない」「スマホ出しただけで逮捕されるぞ」そんな声が2016年7月14日からネット上に大量に噴出し、滋賀県警は「誤解だ!」と頭を抱えている。
きっかけは県迷惑行為等防止条例の改正案に対する意見をホームページで募ったことだった。改正案には、盗撮行為の規制強化がうたわれていて、カメラに下着の写真が写っていなかったとしても盗撮目的で写真機等を「人に向ける行為」をした場合も規制対象になる、となっている。スマホをのぞく行為自体は、角度によっては周辺にカメラレンズを向けることになるため、「冤罪が出まくりだ!」などと騒ぎになったのだ。
「滋賀県に観光に行けない」
滋賀県警が16年6月27日に出した迷惑行為等防止条例の改正案には、盗撮行為と付きまとい行為の規制強化が盛り込まれた。盗撮行為については、これまで「公共の場所」「公共の乗り物」に限定していた条例の適用を学校や会社、スポーツクラブなど、「特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所」にまで拡充する、とした。
さらに、これまで下着姿等を盗撮しようとした人がいても、下着姿等の映像が撮影されていない場合は、規制の対象にならなかったが、これからは「人に向ける行為」「設置する行為」も規制対象にする、とした。罰則も現行の「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」から「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引き上げる。こうした改正案がホームページでアップされ、ネット上で拡散する中、16年7月14日頃から激しい批判が起きることとなった。
「無茶だろwこれ自意識過剰系のババアが、すべての男を訴えるぞw」
「きちんと盗撮した事実がある人間だけを捕まえるべきだと思うんだよ。スマホは皆が持ち歩いてるんだから、凶器とは違う」
「スマホの画面を見ていればカメラは前を向いているから、盗撮されたと言われれば言い逃れできないよ」
「滋賀県『ポケモンGO』やったら逮捕な」
などと大騒ぎになった。
とくに、誰もが心配しているのは「冤罪」で、
「この改正案やばいわ。冤罪で捕まったら痴漢行為よりも無実を証明するの難しいな」
などといった意見が出て、滋賀県に観光に行けない、とか、スマホを持ち歩けない、などと滋賀県批判の大合唱になった。
「ブリーフ裁判官」こと岡口基一さんも16年7月14日にツイッターで、
「スマホでの盗撮って、本当に多いよね。ちょっと前には、裁判官や弁護士まで。ってことで、スマホを他人に向けただけで犯罪になるというのはどうよ」
などと疑問を呈した。これに対しフォロアーも、
「こんなバカな条例作ったら間違いなく観光客は減るでしょうね」
などと同意している。
「ネットで議論されていることは誤解であり間違いです」
J-CASTニュースが県警に7月15日に取材すると、担当者は開口一番、
「ネットで議論されていることは誤解であり間違いです」
と語り出した。ネット上での騒ぎが県警にも伝わっていて、担当者は相当頭を抱えている状態のようだ。
この担当者によると、そもそも「盗撮目的で」カメラを「人に向ける行為」をした人を取り締まるのは、既に他府県でも実施していることだといい、滋賀県が特別なわけではない。また、これまでは盗撮行為をした場合でも下着などの映像が写っていなければ取り締まりの対象になりにくかった。しかしこれからは、映っていなくても明らかに盗撮しようとしたならば取締まれるようになる。そして、これらを告知することで犯罪防止にもつながる。そういった目的なのだ、と説明した。
いずれにせよ、県警のホームページが、「人に向ける行為」「設置する行為」と、カギカッコで強調した表記だったため、2ちゃんねるなどでこの部分が拡散されたことも、批判を強めることになったようだ。
担当者は
「スマホを出したからとか、レンズをのぞいたから逮捕とか、現実にはありえない」
と話していた。