「背景や文脈を総合的に判断する必要がある」
16年5月に成立したヘイトスピーチ対策法は、対象となる「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」について、
「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由にして、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」
と定義している。
選挙活動において、ヘイトスピーチが疑われる言動があった場合はどのような対応が考えられるのか。法務省人権擁護局の担当者は7月14日、
「差別的な言動があったかどうかは、発言内容や背景、どのような文脈で使われたかなどを総合的に判断する必要があります。選挙活動においてもこの原則は変わらず、たとえば、候補者の演説の中で『シナ』といった言葉が出たからといって、直ちに差別的な言動だと判断することはできません」
と説明した。ただ、有権者から「候補者の演説内容が人権侵害である」と指摘され、その内容が人権侵犯事件とみなされた場合、法務省から候補者に対して改善を求める「勧告」や「要請」といった処置が取られることも考えられるという。
公職選挙法との兼ね合いはどうか。東京都選挙管理委員会は
「選挙運動においては、原則として自由に政策や主義・主張をよびかけることができます。選挙管理委員会が演説の内容にまで立ち入って規制することはありません」
と答えた。演説内容に選挙管理委員が介入すると、選挙の自由妨害について定めた公職選挙法第226条に抵触する可能性があるという。演説内容に対する判断は、あくまで有権者にゆだねるという立場だ。
桜井氏の池袋での街頭演説は、約20分で終了した。この間、在日韓国・朝鮮人に関する発言はなかった。