「天皇の地位を安定させるということが望ましいという観点」
国会では、退位の制度を設ける求める声がたびたび上がっている。例えば01年11月に参院で開かれた「共生社会に関する調査会」では高橋紀世子議員(当時)が
「天皇自身が望まれたときは、退位なされるようにした方がいい」
と問題提起。それに対して宮内庁の羽毛田信吾次長(当時)は、(1)退位を認めると歴史上いろいろ見られたような、いわゆる上皇や法皇的な存在というものの弊害が出るおそれがある(2)必ずしも天皇の自由意思に基づかない退位ということの強制があり得る(3)天皇が恣意的に退位する懸念がある、などと説明。
「天皇の地位を安定させるということが望ましいという観点から退位の制度を認めないということに現行法はなっている」
とした。1992年4月の参院内閣委員会、1991年の3月の衆院予算委員会第1分科会、1984年4月の内閣委員会でも、歴代の宮内庁次長が3つのポイントを挙げていた。
退位ができないのは「院政」をはじめとした政治的な動きを皇位継承に波及させないための工夫だとも言え、皇室典範を改正して「生前退位」を可能にするためには、こういった課題を解決する必要がありそうだ。