指をしゃぶったり、爪をかんだりする癖がある子はアレルギーになりにくい。しかも、両方の癖のある子はなおさらアレルギーが少なくなるという驚きの研究がまとまった。
ともにお母さんからは叱られがちな「悪い癖」だが、これからは「いけません!」というのはやめよう。
アトピーや食物アレルギーが3~4割も減る
この研究をまとめたのは、ニュージーランド・オタゴ大学とカナダ・マクマスター大学の合同チーム。小児科学誌「Pediatrics」(電子版)の2016年7月11日号に発表した。それによると、アレルギーに関する健康データが登録されているニュージーランドに住む約1000人を対象に、指をしゃぶる癖、または爪をかむ癖があったかどうかを5歳・7歳・9歳・11歳の時点にさかのぼって調査した。そして、対象者が13歳になった時点、および32歳になった時点で、アトピー性皮膚炎・鼻炎、食物アレルギー、喘息(ぜんそく)、花粉症などのアレルギー症状があるかどうかを調べた。
データの分析では、両親の喫煙経験や犬や猫などのペットの有無、イエダニがはびこっている環境かどうかなどのアレルギーリスクを考慮した。そのうえで次の結果が出た。
(1)全体の31%の人が、子ども時代に頻繁に指をしゃぶったり、爪をかんだりする癖があった。
(2)全体では13歳の時点で45%の人にアレルギー症状がみられた。しかし、指をしゃぶる癖と爪をかむ癖のどちらか一方があった人は、この数字は40%に低くなった。
(3)指をしゃぶる癖と爪をかむ癖の両方があった人は、この数字がさらに31%に低くなった。
(4)3指をしゃぶったり、爪をかんだりする癖のある人にアレルギー疾患が少ないという傾向は、32歳になった時点でも持続していた。
(5)以上の結果をまとめると、指をしゃぶったり、爪をかんだりする癖のある人は、そういう癖がない人に比べると、アレルギー症状になるリスクは13歳の時点で33%低く、32歳の時点では39%低かった。
指からバイキンが入って免疫力を高めている
いったいどうして、指をしゃぶったり、爪をかんだりする癖のある子どもはアレルギー症状になりにくいのか。研究チームのマルコム・シアーズ・マクマスター大学教授はこう説明している。
「それは、指をしゃぶったり、爪をかんだりして、バイキンと接する機会が多くなり、免疫力が強化されるためです。今回の結果は、清潔すぎる環境で育つとアレルギー体質になりやすくなるという過去の研究成果と合致します。犬を飼っている家の子どもや、土ほこりが多い農家の子どもはアレルギーになりにくいことがわかっています。決して、子どもを不潔な環境で育てることを奨励するわけではありませんが、不潔と思われる子どもの癖にもよい面があるということです」