【主治医が見つかる診療所】(テレビ東京)2016年7月4日放送
「夏のちょい足し食材SP」
日本古来の保存食「梅干し」。昔から食欲増進作用や抗菌効果があると知られている。
近年の研究で、新たに「骨粗しょう症」と「肥満」の予防効果がわかり、注目が集まっている。
はちみつ入り梅干しでも効果抜群
和歌山県立医科大学・宇都宮洋才准教授らの研究チームが、和歌山県に住む60代~80代の男性約60人の梅の摂取習慣と骨密度の関係を調査したところ、梅干しを週に1個~2個食べている人は、全く食べない人の1.2倍骨密度が高いという結果が出た。
宇都宮准教授「梅に含まれるクエン酸は色々な栄養素と吸着する『キレート作用』があり、カルシウムとクエン酸が一つになって、体内に吸収しやすくなる」
カルシウムは本来水に溶けにくく、体への吸収率が低い栄養素だ。梅干しを食べると、クエン酸がカルシウムを包み込み、吸収率がアップする。
さらに、梅に含まれるバニリンという成分が肥満予防になるという研究結果も。梅干しを食べるとバニリンが脂肪細胞を刺激し、脂肪が燃焼されやすくなり、肥満を防げる。
梅干しには、昔ながらのしょっぱいものとはちみつなどで味付けしたものがあるが、効果に違いはあるのだろうか。
宇都宮准教授「甘いはちみつが入った梅干しは本当の梅干しではないと心配しながら食べている人もいるが、調味梅でも効果は変わらないとわかっている」
宇都宮准教授の研究チームが調査した結果、バニリンの含有量はほぼ同じだったという。
梅農家直伝の様々なレシピ
日の丸弁当にしたり、おにぎりに一粒入れたりするのが定番の食べ方だが、梅農家では様々なレシピで梅干しを食べている。
日本一の梅の生産地、和歌山県みなべ町では、ご飯を炊く時、米1合につき1粒の梅干しを炊飯器の中に入れ、炊きあがってから種だけ取って混ぜ込む、梅の混ぜご飯が定番メニューだ。
梅農家・中早大輔さん「食が進む。夏は普通のご飯だったら喉を通らないけど、これなら食べられる」
中早家では、しょう油に青梅を約1か月漬け込んだ「梅じょう油」を調味料として使っている。食欲が落ちがちな夏場、チャーハンの味付けとしてよく使うそうだ。
梅農家の林スミエさんの家では、水、しょう油、砂糖と梅干しでサバを煮た「サバの梅煮」を食べているほか、梅肉をすりつぶし砂糖を加えて練った「梅びしお」を、エビチリやマカロニサラダ、鶏肉を焼く際の調味料に使っている。
みなべ町ではバーベキューで「焼き梅」を作るのも流行っているそうだ。
アルミホイルで梅干しを包んで焦げ目が付くまで焼き、焼き肉のタレに入れ、身をほぐして肉と一緒に食べる。
梅加工業・岩本智良さん「焼き梅にははちみつ梅など甘口がおすすめ。甘い梅がホクホクっとして、ジュワーっと来るから美味しい」
しょう油やソースがわりに使うのもアリ
番組レギュラーの主治医たちも梅干しの効果を絶賛だ。
札幌禎心会病院脳疾患研究所・上山博康所長「肉や小麦や米など、ほとんどの食べ物は酸性。クエン酸の最大の利点は、体をアルカリ性にする食べ物であること。体質を中和してくれるとても貴重なもの。夏バテにはクエン酸です」
和歌山県出身の秋津医院・秋津壽男院長「子供の頃、風邪をひくと梅干しを真っ黒になるまで焼いて、お茶を入れて風邪薬にしていた。塩分を除けばパーフェクトな食品。家では塩辛い梅も甘い梅も、水で塩分と糖分を抜いて、昆布とかつおのだしを漬け込んで味を付け直した梅干しを作っています」
そしがや大蔵クリニック・中山久徳院長は、塩分が心配だという。
「標準的な大きさの梅干しで、減塩のものでも塩分が1グラムくらいは含まれている。それをいくつも食べてしまうと塩分過多になってしまってよくない。調味料として、梅干しをほぐして梅肉を色々なところにちょい足しするのがよい。冷奴にしょう油ではなく梅肉をのせて食べたり、とんかつもソースをかけるのではなく梅肉に大根おろしを付けて食べてみたり」
日本薬科大学・丁宗鐵学長「塩分の問題もあるが、逆に夏はそれを利用する。梅干しとお茶を一緒に水筒に入れると、熱中症予防のいい塩分補給になる。そういう新しい応用もあっていい」