多くの反応がないと幸福感得られなくなる
青柳氏は、前提として「人間は誰かに承認されることに幸福を感じる生き物」だとする。「自撮り画像をSNSにアップしたら、好意的な反応がもらえた」という経験をすると、幸福感が得られる。しかしそれは一時的で、自撮り画像を投稿して反応がくることに徐々に慣れ、いつしか「当たり前」に感じるようになる。すると、もっと多くの人から反応をもらえないと幸福感を得られなくなる。そこでインパクトの強い自撮り画像を撮って人目を引こうと考え、行き過ぎた行為につながっていくのだ。
こうした行動に向かう心理は、酒やギャンブル、薬物に代表される「依存症」になる経緯に似ている、と青柳氏は指摘する。何気ないきっかけで始まり、一度幸福を感じてしまうと、どんどん過激な方向にのめり込む。スマートフォンとSNSが普及してきた現代では、「自撮りに夢中になった発端も些細なことだったかもしれません。たまたま(SNSに)載せた一枚が危険な状況をとらえたもので、反響が大きかったら、同じ方向性で続けてしまう可能性はあります」という。
しかし、酒好きでもアルコール依存症にまでなる人はごく一部であるように、大半の人は節度を保って酒と付き合っている。自撮り投稿者の場合も同じだ。それが身の危険が及ぶレベルまでエスカレートしてしまう理由は、「リアルな生活で満足が得られていないのではないか」と推測する。
「現実が充実していないために、インターネット上で存在感を出そうと躍起になる。家族や友人、同僚との関係が深い人なら、そういう人たちのことが頭をよぎり、自分を危険にさらそうとしてもブレーキがかかるはずです」
現実の人間関係を充実させることが、自撮りのための危険な行為を自己制御する一つの対策になりえる、と青柳氏は語った。