「民進党」の名前は十分には浸透せず、いまだに「民主党」と呼ばれてしまう――参院選の期間を通じて、民進党関係者はそんな悩みを吐露してきたが、参院選直後の安倍晋三首相の記者会見でも「民主党」と、党名を間違えられてしまった。
民主党と維新の党が合流して民進党ができたのは2016年3月。もう約4か月が経っている。ただ、「首相が野党第1党の名前を間違えるとは何事か!」と怒る資格は、民進党にはなさそうで...
首相会見の憲法改正に関する質疑応答で
参院選投票日から一夜明けた2016年7月11日午後、安倍首相は東京・永田町の自民党本部で記者会見を開いた。
黒っぽい上着に白いシャツ、ノーネクタイ姿で会見に臨んだ安倍首相は、目標に掲げた「与党の自民・公明で61議席」を超える70議席(自民56、公明14)を獲得した参院選の結果について、「アベノミクスを加速せよ、という力強い信任をいただいた」と述べた。
その後、「総合的で大胆な経済対策を実施する」として、「未来への投資を行う」「成長と分配の好循環を作りだす」などの方針をあらためて示した。
約11分の安倍首相のあいさつの後、記者からの質問に移った。憲法改正について、野党との距離感を聞かれた安倍首相は、
「民主党は、残念ながら安倍政権の間は憲法改正をしないと、岡田(克也代表)さんが仰っている。それは建設的な対応とは言えない」
と批判、衆参両院の憲法審査会で真剣に議論をするべきだと訴えた。批判の内容はともかく、本来「民進党」と言うべきところを「民主党」と間違えてしまった。
どこからも訂正の指摘はなく...
もっとも、この首相回答を引き出す質問をした記者も、
「(憲法改正について、憲法審査会での議論は)参院選で改憲阻止を掲げた野党第1党の民主党の合意を得ながら進めていくお考えでしょうか」
と、やはり「民進党」ではなく、「民主党」と間違えていた。
記者も安倍首相もとくに訂正するようなやりとりはなく、淡々と会見は進行した。
記者と首相に党名を間違えられてしまった民進党だが、怒る資格はあまりなさそうだ。民進党は7月9日、参院選の投票日向けに出す「党声明」の中で、「民主党はこの思いを胸に、この選挙戦を全力で~」と、自党の名前を間違ってしまった。報道各社へ解禁日時付きで送った文書の中でのことで、約50分後に「民進党」と訂正した声明を送り直したが、「民進党」の名前の浸透が進まないことを自ら証明してしまった形となった。
また、岡田代表も3月の結党大会で、「では、民主党が...、いや民進党が結党に至った経緯の説明を...」と言い間違っていた。こうした経緯は、J-CASTニュース記事「民進党が投票日声明で『民主党』と間違える 党名浸透しないの当たり前」(7月10日夜配信)が伝えている。
民進党は今回の参院選で、改選議席数から10以上減らし32議席にとどまった。有権者が投票の際、「民進」と書かずに「民主」と書いて、無効とされるケースがかなりあったのではないかとの指摘もあるが、どれくらいあったのかはわからない。