腸の壁に穴があき、恐ろしい菌が血流に乗り体中に
コーネル大学の研究チームは、慢性疲労症候群の患者48人と健康な39人の血液と大便のサンプルを入手し、詳細にDNAの分析を行なった。その結果、次のことがわかった。
(1)大便の検査では、慢性疲労症候群の患者は健康な人に比べ、腸内細菌の多様性が極端に低かった。腸内細菌とは、人間の腸の中に住む約3万種類、約1000兆個の細菌のことで、免疫機能に影響を与えており、種類が豊かなほど健康になるといわれる。
(2)また、慢性疲労症候群の患者には、体内の炎症を抑える働きをする腸内細菌が非常に少なかった。この有用な細菌が欠乏している状態は、クローン病や潰瘍性大腸炎の患者に似ていた。2つの病気は、ともに消化器官の壁に炎症性の潰瘍ができ、粘膜がただれる病気で、原因と治療法がわからないため難病に指定されている。
(3)血液検査では、腸管壁浸潤(リーキー・ガット)を引き起こした時と同じ炎症物質が検出された。「リーキー・ガット」は腸の壁がただれて穴があく病気で、最近、体に良くない多くの症状の源として注目されている。
(4)腸壁に穴があくと、本来、腸内細菌が駆除するはずの病原菌や有害物質が穴を通じて血液中に漏れだす。そして血流に乗って体中をめぐり、様々な病気を引き起こす。片頭痛、吐き気、下痢、食物アレルギー、うつ病、統合失調症、月経前症候群、更年期障害、喘息、アトピー性皮膚炎、ワキガ、加齢臭...などがそれで、「リーキー・ガット症候群」と呼ばれている。
(5)リーキー・ガットの原因は、乱れた食生活や睡眠不足・喫煙・飲酒・運動不足などのよくない生活習慣によって腸内細菌の状態が悪くなることだ。
(6)血液中の炎症物質を検査することで、83%の確率で慢性疲労症候群と診断することに成功した。