ランナーの「燃費」は年をとっても衰えない マラソン完走者に高齢者が多い不思議

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100歳のマラソン最高齢男性は、89歳から走り始めた

   実は、同様の実験を2012年に米ニューハンプシャー大学で行なった。18~39歳のヤンググループ18人、40~59歳のマスターグループ22人、60~77歳のシニアグループ11人に4段階の速度でトレッドミルを走ってもらった。すると、最大酸素摂取量、最大心拍数、全身の筋力や柔軟性など、すべての運動能力は加齢とともに低下したが、「ランニング・エコノミー」の数値だけは3つのグループともほぼ同じだった。

   当時、この論文を紹介した米紙ニューヨーク・タイムズは「研究者にとって予想外の結論で、驚きを隠さなかった」と書いている。また同紙は、1980~2009年のニューヨーク・マラソンの統計記録を調べた結果、40歳未満の若いランナーの完走率が低下しているのに対し、40歳以上の中高年ランナーの完走率が伸びていることも報道している。

   「ランニング・エコノミー」が変わらないメカニズムは、まだ、よくわかっていない。実験に参加した高齢ランナーは長年、ジョギングを続けてきた人ばかりだ。年をとるとペース配分を覚え、無理をしない「省エネ走法」が身に着くのだろうか。

   ちなみに、女性のフルマラソン完走のギネスブック世界最高齢記録は、2015年の米国人女性のハリエット・トンプソンさん(当時92歳)だ。それまでの記録を3時間も縮める7時間24分で完走した。彼女がランニングを始めたのは76歳の時。理由は「老人ホームの仲間のために、がんと白血病の研究資金を募集する」ためだ。

   男性の世界最高齢記録は、2012年のインド系英国人のファウジャ・シンさん(当時100歳)で、8時間25分だった。シンさんが初めて走ったのも非常に遅く、89歳の時だ。理由は「妻に先立たれて寂しかったから」という。

   確かに運動を始めるのに遅すぎるということはない。

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