日本は人道的・社会正義を実現するような支援を
――今回の事件によって、どのような影響が出るとお考えですか。
大橋教授 外国人にとって現地の治安は2015年9月以降、急速に悪化しました。日本人とイタリア人が殺される事件が立て続けに起き、協力隊はダッカ周辺を除いてほとんど引き返したのです。今回の事件を受け、企業活動も援助活動もシュリンク(縮小)し、しばらく様子を見る形になると思います。ですから、日本とバングラデシュ関係は非常に冷え込むと思います。
こういう事が続くようなら絶望的ですし、収まるとしても徐々にしか戻っていかないことになると思います。
――実行犯はそれを狙っていたということでしょうか。
そういうことです。テロに屈してはいけないのですが、屈せざるを得ない。他に方法がないという感じですね。非常に残念です。彼らが「不正義」と捉える部分をどうにかしていくためにも、日本はもっと人道的あるいは社会正義を実現するような支援を増やしていくことが必要だと思います。
大橋正明教授 プロフィール
1953(昭和28)年9月24日、東京生まれの62歳。東京の町田市在住。72年、早稲田大学政経学部入学。74年10月~75年3月までブッダガヤにあるマハトマ・ガンディーのサルボダヤ運動のサマンバヤ・アーシュラム滞在(主にバラチャティ郡バッガ村にある全寮制の「不可触民」の子どものための小中学校に滞在。子どもたちの親の多くはブーダン農民)。78年3月大学卒業。78~79年文科省系特殊法人職員、79~80年インド政府奨学金を受け、インドの国立ヒンディー語学院上級ディプロマコース終了。80~87年に日本の国際協力NGOのシャプラニールのバングラデシュ駐在員と東京の事務局長、88~90年に国際協力機構(JICA)奨学金で米国コーネル大学大学院国際農業・農村開発研究科修了、90~93年に国際赤十字・赤新月社連盟兼日本赤十字社のバングラデシュ駐在員として防災、農村保健、難民などを担当。93~2014年まで恵泉女学園大学教授、2014年 から現在まで、聖心女子大学文学部人間関係学科教授(NGO/NPO論、南アジア地域研究)。
主要な社会活動は、シャプラニール=市民による海外協力の会評議員(元代表理事)、国際協力NGOセンター(JANIC)理事(前理事長)、日本NPOセンター副代表理事、(公財)早稲田奉仕園常任理事、アーユス仏教国際協力ネットワーク理事、(社福)コメット監事、国際開発学会常任理事、地球環境基金運営委員他。
主著に、NGOs and Japan's ODA: Critical Views and Advocacy(Chapter 20 of "Japan's Development Assistance" edited by Kato, Hiroshi et.al, Palgrave McMillan, London, 2015)、『国際協力用語集』(共編著、国際協力ジャーナル社、2014年)、『グローバル化・変革主体・NGO』(共編著、新評論、2011年)、『バングラデシュを知るための60章[第二版]』(共編著、明石書店、2009年)、『「不可触民」と教育―インド・ガンディー主義の農地改革とブイヤーンの人びと』(明石書店、2001年)他。