日本は完全に向こう側になってしまった――ダッカ・テロ事件の背景にあるもの(下)
聖心女子大・大橋正明教授に聞く

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貧困層はISの思想に触れる機会が少ない

――実行犯は主に高学歴で裕福な家庭で育ったと報じられました。イスラム過激派組織IS(イスラム国)も犯行声明を出しており、そのつながりが指摘されています。

大橋教授   おそらく彼らはISの現場に行ったわけではなく、インターネットで(IS側と)知り合っています。ネット上で、かつ英語でやりとりをしていたのでしょう。これが貧しい人となると、ネットにアクセスができない。そして英語も話せない。そのためISの思想に触れる機会が少ない。そういう意味でISに関しては裕福な人の方が触れやすい状況にあります。
一方で、貧しい人たちでは「マドラサ」というイスラム神学校に通い、国内の過激派組織のJMB(ジャマトゥール・ムジャヒディン・バングラデシュ)などに参加するケースが数的には最も多かったです。JMB以外にも過激派組織はいくつかありますが、いずれも禁止されており、弾圧を受けています。

――裕福層の若者というと、どのような暮らしぶりなのでしょうか。

大橋教授   スポーツカーを乗り回しているような若者もたくさんいます。特に繊維業関連の裕福層は日本人よりはるかに豊かな生活をしています。工場労働者の月給は1万円以下ですが、社長クラス、所有者クラスは我々より持っているのではないでしょうか。
それでもこの国には社会保険や社会保障が十分整備されているわけではないし、病気になれば困ってしまう。警察も信用されていないし、捕まれば拷問される。そういう社会的正義が守られていないのが現在の大きな問題なのだと思います。そういう「不正義」が彼らをテロリズムに走らせてしまうきっかけを作っている。
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