日本は完全に向こう側になってしまった――ダッカ・テロ事件の背景にあるもの(下)
聖心女子大・大橋正明教授に聞く

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実行犯は警備が手薄なところを狙った

――近年の日本からの援助の状況はどうなっているのですか。

大橋教授   援助額(主にODAの円借款)は5年前の2007年が429億円。08年が397億円、09年が387億円...という具合です。ところが2015年度は1年だけで1330億円です。これは、2014年に日本政府が向こう4~5年で6000億円の支援をバングラデシュ政府に提供ということを決めたからです。
もともとバングラデシュと日本は2015年に行われる国連安全保障理事会の非常任理事国選挙で1枠をめぐり競っていました。しかし報道によると、日本が6000億円の約束を2014年にしたため、バングラデシュ政府は立候補を辞退し、日本を支持する考えを表明したという経緯があります。
それから安倍政権は、今は開発協力大綱とよぶODA(政府開発援助)の方針の中で、ODAと日本の民間企業との関係を深めました。そうしたこともあり、バングラデシュでは、日本関係の非常に多くのプロジェクトが行われている状態になっているのです。しかし、その分、日本人の警備がどうしても手薄になってしまった可能性もあります。

――今回テロの犠牲になったのは、JICA(国際協力機構)が発注したプロジェクトに参加していた方々でした。襲われた状況について、どう見ていますか。

大橋教授   今回襲われた方々は現地に住んでいるのではなく、短期出張者ですよね。事件現場となったレストランはダッカの中心部で大使館や高級住宅が並ぶグルシャン地区にあります。このグルシャンには外国人が集まる高級ホテルがあるのですが、犯人がそこを狙っていないのは、やはり警備が手薄なところへ行ったということです。
駐在員は、基本的に危ないところへ寄らず、自宅で食事をとります。一方で出張者はホテルに泊まる。JICA関係者は必ずしも最高級のホテルに泊まれるわけではないので、もう少し安いホテルに泊まる。そうすると外に毎日のように食事に出なくてはいけない。今回の事件は、そんな二重の意味でのソフトターゲットが狙われたわけです。本当に残念に思います。
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