「名古屋流」は東京で通用するか コメダ珈琲店の逆張り経営

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   喫茶店チェーンの「珈琲所 コメダ珈琲店」を運営するコメダホールディングスが2016年6月29日、東証1部に上場した。今後上場する「LINE」やJR九州に規模で及ばないとはいえ、時価総額800億円超と今年の大型案件として市場の期待も高い。株価は今ひとつさえないが、「中高年と喫煙者」をターゲットとし、おしゃれなスターバックスなどとはひと味違う「逆張り」経営で、国内1000店を目指すと鼻息が荒い。

   コメダ珈琲店は、喫茶店文化が根強く残る名古屋市が発祥。今も店舗展開は東海地方が中心だが、関東、関西にも進出しており、約700店を展開している。2016年2月期の売上高は217億円で純利益は41億円。コーヒー1杯420円(税込)と決して安くはないが、ピーナッツなどのおつまみがついてくるところが「お値打ち」を求める名古屋らしい。参考までに「ドトール」ならブレンドコーヒーのSサイズが220円(同)、高価な印象のあるスターバックスでもドリップコーヒーのショートサイズなら280円(税抜)で飲める(値段表記は、いずれも公式サイトによる)。

  • コメダ珈琲は関東、関西へ着々と進出している(画像はイメージ)
    コメダ珈琲は関東、関西へ着々と進出している(画像はイメージ)
  • コメダ珈琲は関東、関西へ着々と進出している(画像はイメージ)

モーニングサービスで「お得感」

   コメダがお得感を発揮するのは、昼前の11時までに(店によって時刻は多少違う)この420円のコーヒーを注文した時だ。「パンとゆで卵」といった簡単な朝食が無料でついてくる「モーニングサービス」を享受できることが、常連客らの心をくすぐっている。

   このモーニングサービスは東海地方では結構、隅々まで普及していて、コメダ以外では「おにぎりにみそ汁」といった和食で勝負する店もあるなど個人経営も含めて競争が激しく、一日中モーニングサービスを出すという店まである。そういう環境で鍛えられているだけに、コメダも「ゆで卵の代わりに小倉あんも選べる」といった工夫をこらしている。ちなみに、モーニングサービスは戦後、繊維産業が盛んで問屋などの商談の場に喫茶店が重用された愛知県一宮市と岐阜市がそれぞれ「発祥の地」と主張している。

   コメダに話を戻すと、ドトールやスターバックスと大きく違うのは「ゆったり感」だろう。1人で店に入っても座席は基本的にソファ席で、カウンターに並んで座らされることはあまりない。セルフサービスではなく、席まで店員が注文をとりに来て、商品を運んでくれる。長居をしてもとがめられないので、豊富にそろえられた雑誌や新聞(男性向けが多いようだが)を、時間を気にせず存分読める。また、大体において喫煙席が、禁煙席と分かれながら存在している。そのため、たばこを吸いながらパソコンを広げて仕事をするサラリーマンの姿もよく見かけられる。個人経営の喫茶店なら東海地方以外でも普通のサービスだが、セルフチェーンではあまり得られないお得感と言えようか。

社長「東南アジアに注目しており、準備したい」

   そんなコメダが上場したのは、知名度を高めて店舗展開を加速するためだ。上場に合わせて資金調達する公募増資はしていない。創業者が2008年に持ち株を投資ファンド「MBKパートナーズ」に売却して東海地方を飛び出す全国展開を託しており、上場はそのMBKの「出口戦略」でもあった。ただ、16年6月29日についた初値は、円高・株安が進む逆境下とはいえ、公開価格(1960円)を5%下回る1867円で、終値は4%下回る1879円と順調な滑り出しとは言えなかった。上場日に記者会見した臼井興胤社長は「市場の評価は真摯に受け止める」と述べざるを得なかった。

   それでも臼井社長は意気軒昂。記者会見では8月に北海道、今秋に南九州に初出店することを披露したうえで、「年間70~80店開店する」と強調した。2020年度に1000店を目指したい考えだ。海外1号店となった今年4月開店の中国・上海に続く海外展開についても「東南アジアに注目しており、準備したい」と語った。

   ただ、基本的に地価や賃料が東海地方より高い東京で「ゆったり感」を維持するには、現在進めているような郊外型に頼るしかないかもしれない。それも一つの道ではあるが、名古屋市内のそこかしこでサラリーマンやリタイヤ組のおじさんたちに憩いの場を提供しているような状況を東京都心部で展開できないとなれば、真の意味でコメダが浸透したとは言えまい。東京都心部にコメダをどう出店するか、経営者の手腕が問われる。

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