「俺は強い!」「俺は勝つ!」といつもビッグマウスを叩いていたモハメド・アリ。彼の最強伝説の源は、その自己暗示力だったといわれる。
アリと同じように「私はできる」と自分に喋り続けると、本当にパフォーマンスを発揮できるようになるという研究がまとまった。英ウォルヴァーハンプトン大学のチームが心理学誌「フロンティア・イン・サイコロジー」の2016年6月30日号に発表した。
金メダリストのイメトレより有効な「つぶやき」
研究チームは、やる気を起こさせるためには、どんな方法が効果を上げるかを調べるために、インターネットを通じて16~91歳の男女4万4742人の協力者を集め、様々なオンラインゲームを競い合ってもらった。通常、心理学の研究では被験者は数百人程度だから、非常に大規模な実験である。
競技成績をあげるには、どの方法がモチベーションを高めるか、代表的な方法を試すために参加者を次の4つのグループに分けた。
(1)競技の最中に、「私はできる!」「今回の反応速度は速かった、すごいぞ!」「次回は必ずうまくいく!」「よし、自己ベストを出すぞ!」などと絶えず独り言を発し、自分を鼓舞するグループ。
(2)競技の前にメンタル・トレーニングの動画を見るグループ。動画に登場するのは、アトランタ五輪の陸上男子200・400メートルなど、五輪で4つの金メダルをとったマイケル・ジョンソンだ。彼は、フィジカル・トレーニングだけでなく、メンタル・トレーニングの重要性を喧伝している人物で、ゲーム前に成功する自分の姿を想像するイメージトレーニングを行なう。
(3)「条件付き実行計画法(if-then planning)」を実行するグループ。これは、物事をすばやくこなす方法の1つで、やるべき項目(ToDoリスト)とやり終わるまでの時間などを書き出し、優先順位の高いものから片づけていく。ゲームやビジネスの面だけでなく、「いつまでに何キロやせるか」といった減量プログラムでも使われる方法だ。
(4)特に何もしないグループ。自分のペースで自由にゲームを行なう。上記3つのグループの効果を測るための対照グループ。
参加者は、300人ほどの12の集団に分かれ、それぞれが上記4つのうちのどれかの方法で自分のモチベーションを高め、ゲームを競い合った。その結果、もっともスコアの成績が良かったのが、(1)の独り言のグループであった。次いで、(2)のメンタル・トレーニングのグループで、(3)の「条件付き実行計画法」グループは、(4)の特に何もしないグループと差はなかった。