バングラデシュの首都ダッカで起きた痛ましいテロ事件は、日本人7人が犠牲になったこともあり、国内でも大きな衝撃が広がった。実行犯として報じられている者の多くは、高学歴の富裕層出身だ。インターネットなどを通じ、イスラム教スンニ派の過激派組織IS(イスラム国)の考えに染まっていった可能性があるとされている。
「アジアの最貧国」と言われてきたバングラデシュ。国民の多くがイスラム教徒でありながら寛容なイメージが強く、日本との関係も良好だった。それなのになぜ――。
経済成長率は毎年約6%台で安定
J-CASTニュースは今回、南アジアの貧困問題解決に取り組むNGO「シャプラニール=市民による海外協力の会」の元代表理事で聖心女子大学教授(国際開発学)の大橋正明教授に話を聞いた。(上)では、今回の事件にもつながるバングラデシュの経済発展、そして過激思想が広がりつつある背景についてお届けする。
――1971年の独立戦争を経てパキスタンから独立したバングラデシュですが、その後の経済発展はどのように進んでいったのでしょうか。
大橋教授 独立後も1975年くらいまでは「貧困」と「援助」の代名詞でした。日照りや洪水といった自然災害が続き、国際的な援助なくしては成り立たないという状況が長く続いていました。それが徐々に変わってきたのは、ここ10~15年くらい。経済成長が本格的に軌道に乗り、経済成長率は毎年約6%台で安定しています。
成長を引っ張っているのは、主に縫製業です。それから海外出稼ぎ労働者の送金も大きい。天然ガスの生産も、必ずしも順調ではないですが経済発展の助けになっています。急成長した理由は色々ありますが、輸出用の縫製業の生産拠点が徐々にバングラデシュにも移ってきたことでしょう。その背景には、最近の中国で人件費が上がったのもあります。
バングラデシュはLDC(開発途上国の中でも特に開発が遅れている国々)の1つに数えられますが、現首相は2021年までに中所得国になるという目標を掲げている。それは、このまま何事もなければ達成できるかもしれません。