円高の影響は
税収の落ち込みで2015年度の剰余金は2500億円となり、前年度の1.6兆円から大きく減った。この剰余金は赤字国債の発行を減らすために使われるほか、例年、補正予算の財源にもなってきた。実際、安倍政権下の2012年度以降、毎年税収が見積もりを1兆~2兆円上回り、補正予算に使われてきた。2015年度補正予算(3.3兆円)は2014年度剰余金と2015年度税収の上振れ分(1.9兆円)でほぼ全額賄えた。
この秋も、大型経済対策が予定されている。英国の国民投票が欧州連合(EU)離脱派勝利に終わったことで国際経済に激震が走り、与党では10兆円規模の経済対策を求める声が強まっている。そのうち3兆~5兆円は財政投融資を活用するとしても、数兆円の一般会計補正予算の財源探しが必要だ。
この補正予算には「一億総活躍」関連などの社会保障関係費も盛り込む予定だが、安倍首相は消費税率の10%への引き上げ延期を決めた際、「赤字国債を財源に社会保障の充実は行わない」と言明している。この約束と、秋の補正予算編成をどう整合させるか、頭を悩ませることになるかもしれない。
2017年度予算編成はより深刻になりそうだ。2016年度以降の税収は「大企業の納税再開が一段落し、法人税の増加ペースは鈍る可能性がある」(財務省幹部)だけではない。円高で2017年3月期の企業業績が伸び悩むのは必至で、当然、法人税収も頭打ちか、下押しされかねない。円安と株高で企業業績を上げ、税収を増やしてきたのがアベノミクスの成果だが、「企業業績が落ち込めば賃上げ幅も縮小し、法人税、所得税収とも頭打ちになるというアベノミクスの逆回転が始まる可能性もある」(アナリスト)。
税収の面でも、経済運営は曲がり角に差し掛かっている。