好調を続けてきた日本の税収に陰りが見え始めた。財務省が発表した2015年度の国の一般会計決算概要によると、2008年度以来7年ぶりに、補正予算編成時の税収見積もりを下回ったのだ。円高基調が続く中、今後も税収は伸び悩む可能性が指摘され、政府が秋に予定する10兆円規模ともいわれる経済対策の財源確保に苦心しそうだ。
「この3年半、税収は国・地方合わせて21兆円増えた」。安倍晋三首相はアベノミクスの成果として、こう繰り返している。
法人税増と「繰越欠損金制度」の関係
実際の数字を見てみよう。安倍政権発足時の2012年度に78.7兆円だった国・地方の税収(予算ベース)は、2016年度(同)に99.5兆円となる見込み。首相が言う21兆円は、この伸びを指す。
ただし、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことによる増収分約8兆円なので、これを除く増収は約13兆円に縮む。
この13兆円の主な内訳のうち、国の税収分だけでみると、所得税4.5兆円、法人税3.4兆円。所得税は、3年連続の賃上げや2014年1月から株の配当など金融取引にかかる税率が10%から20%に引き上げられたことなどで伸びた。
法人税収増は企業業績の反映ではあるが、「繰越欠損金制度」で押し上げられた面がバカにならない。過去の赤字を繰り越し、黒字になってからも相殺して法人税の納付額を減らせる制度で、実際にバブル崩壊で巨額赤字を計上したメガバンクなどは、10年以上、法人税を納めてこなかった。これらが2010年度以降は順次、納税を再開している。2008年のリーマン・ショックによる赤字で5年間、法人税を納めていなかったトヨタ自動車も、2013年度分から納税を再開した。ここ数年は、こうした大企業の納税再開が相次いでおり、国税庁の統計によると、繰越欠損金は、安倍政権発足時の2012年度から2年間で約9兆円減少した。
2015年度の税収は前年度を2.3兆円上回ったが、1月の補正予算時点の見込みは1400億円下回り、特に法人税収が9000億円落ち込んだ。年明け以降の円高や新興国経済の一段の減速で、輸出企業を中心に業績が伸び悩んだ影響と見られる。