大麦:「貧乏人は麦飯を食え」は名言だった 欧米で心臓病・動脈硬化予防のお墨付き

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   戦後間もない頃、「貧乏人は麦飯を食え」と国会で言い放ち、国民の激怒を買った大蔵大臣(現在の財務大臣)がいた。のちに総理になった池田勇人氏だ。実は、若い頃に血膿が止まらない難病に苦しみ、奇跡的に生還した経験から、米食よりも麦飯の持つ健康パワーを知っていたといわれている。

   それから約70年、池田氏が推奨しながら猛反発を受けた「大麦」が、改めてヘルシー食材として熱い視線を浴びている。

  • 押し麦(左)と白米
    押し麦(左)と白米
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徳川家康の天下取りと日露戦争勝利の陰の主役

   大麦は、健康オタクで74歳まで長生きした徳川家康が主食にし、天下取りの陰の力になった。明治の日露戦争では、脚気(かっけ)による死者に苦しんでいた海軍が、「海軍カレー」に大麦を入れて脚気の撲滅に成功、勝利に導いている。海軍に麦飯を採用したのは、「ビタミンの父」といわれ、東京慈恵会医科大学を創設した高木兼寛・海軍軍医総監だ。その伝統もあって、慈恵大学病院では現在も白米7割・大麦3割の麦ご飯を病院食として提供し、『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』という本まで出している。

   2016年6月14日に放送された「たけしの健康エンターテイメント みんなの家庭医学」(ABC朝日放送)では、「名医が認めた医食同源」として「大麦」を特集した。番組の中で、東京医科大学病院の椎名一紀医師が大麦のすごさを次のように説明した。

   (1)大麦には食物繊維が非常に多く含まれている。その量は白米の約20倍、玄米の約3倍、ゴボウの約1.6倍もある。しかも、大麦の場合、食物繊維が可食部分の胚乳に多いため、押し麦にするなど加工しても減らない。

   (2)主な食物繊維の「大麦β(ベータ)グルカン」は水溶性のため、腸内でビフィズス菌のような善玉菌のエサになり、腸内細菌のバランスがよくなる。

   (3)また、大麦βグルカンは腸に入ると、水に溶けてゲル状に変化、腸の中の胆汁酸を包み込んで便と一緒に体外に出してしまう。すると、足りなくなった胆汁酸を補うために肝臓が血中からコレステロールを取り入れ、胆汁酸を作り始める。このため、血液中の悪玉コレステロール(LDL)が減少する。

   (4)大麦βグルカンは一緒に体内に入った糖質と混ざり合い、消化吸収を穏やかにして、食後の血糖値の急上昇を抑える。このため、糖尿病や動脈硬化を予防する効果がある。

   ちなみに、麦茶や麦焼酎には加工段階で大麦βグルカンが損なわれてしまうため、いくら飲んでも健康効果は期待できないそうだ。

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