報道番組で紹介された、あるユニークな新人社員研修が、ネット上で物議を醸している。それは叱られ慣れていない新入社員に「好ましい叱られ方」をレクチャーする、といったもの。
番組では「遅刻した」という設定の新入社員が、上司役の受講者から「何時だと思っているの」などと厳しく問い詰められる場面が放送された。これに、視聴者から「叱られるに上手もくそもない」「上司に叱り方を教えた方がいい」といった違和感を示す声が相次いだ。やはり叱られ慣れしていない人が多い反映なのか。
「遅い!今何時だと思っているの?」
研修の模様を放送したのは、2016年7月6日放送の「NEWS ZERO」(日本テレビ系)。社員の離職を防ぐためのさまざまな試みが紹介された。
その中の1つが「叱られる研修」で、受講者が上司役と部下役に分かれてやり取りするロールプレイング式のセミナーだ。カメラは名古屋市で開かれた、ある企業の新人研修の模様を映す。
上司役になったのは同番組の女性レポーターで、「遅い!今何時だと思っているの?周りのみんなもすごく心配してたんだよ」と部下役の男性社員(21)を問い詰める。
男性社員は頭を下げ、「すみません。二度とこのようなことがないように頑張ります」と謝罪した。しかし、上司役は矢継ぎ早に「何を頑張るの?遅刻しただけだよ」と厳しい指摘を投げかける。口ごもる男性社員。
ここで、「(男性社員は)その場を取り繕うだけで終わってしまいました」とナレーションが入る。
その後、研修担当者が「上手な叱られ方」として謝罪、状況説明、改善案の提示、という3ステップを紹介した後、場面は「テイク2」へ。
先ほどと同じ男性社員は叱られた後、「夜遅くまで仕事のことを考えていて、アラームをかけ忘れたため寝坊しました。今後はアラームを大量にかけ、仕事の悩みは先輩に相談するようにします」とマニュアルをなぞるように謝罪した。
上司役はこの謝り方を「こうやって素直に言われると、『悩みは何ですか』と上司が聞いてくれそう」と高く評価した。
むしろ上司に叱り方を教えた方がいい
こうして男性社員は「好ましい叱られ方」を覚えたわけだが、視聴者はネット上で口々に異論を唱えた。ツイッターに
「叱られるに上手もくそもねぇだろ」
「叱られた意味を分かる頭がなければ、なんの意味もない」
といった批判、「(上司に)むしろ叱り方を教えた方がいい」という提案が相次いでいる。
研修を行った「名南経営コンサルティング」(名古屋市)は16年7月7日に公式サイトで、同番組に取り上げられたことを報告。「若者の多くは叱られた経験が少ない」と社会の背景を分析し、「(叱られる事への)耐性をつける」「(叱られた時の)嫌な気持ちを成長する力に変える」と研修を受ける意義について説明している。
公式サイトを見ると、 9月28日には「先輩社員の『褒める力』『叱る力』」と題した「叱る意義と叱り方の重要なポイント」を学ぶ研修も予定されている。