小池百合子・元防衛相(63)が東京都知事選(2016年7月14日告示、31日投開票)への出馬を正式に表明したことで、一気に都知事選が「劇場化」の様相を帯びてきた。
7月6日に開いた出馬会見では、自らへの推薦を渋っている自民党東京都連を「ブラックボックス」だと批判し、公約の1項目目には都議会の「冒頭解散」を掲げた。議会による不信任案が可決されなければ議会の解散はできないが、小池氏は「都民の声を聞いてみましょう」と主張。自らの「敵」を明確に設定し、その是非に関する判断を民意に委ねようとする手法は、2005年の「郵政解散」に見られたような「小泉劇場」そのものだ。
「都民目線の信頼を回復するために、都議会を解散したい」
小池氏は出馬会見で、公約について
「いきなりですけれども、都民目線の信頼を回復するために、都議会を解散したい。よく『分裂選挙』ということが言われるが、分裂は都議会自民党と都民の間の分裂ではないか。民心が離れては、都民に寄り添った温かい政策は遂行されない。都民の声を聞いてみましょう」
などと「冒頭解散」の意図を説明した。これは、郵政民営化法案が参院で否決されたことを理由に衆院を解散した05年の郵政解散を思い出させる。小泉氏は解散時の会見で、
「郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか。これをはっきりと、国民の皆様に問いたいと思います」
と述べており、是非を「聞いてみたい」という点で共通している。「解散」の具体的な手法については、
「私でダメだということであるならば、議会は不信任(案)を出して来られるということは可能性としてある。私が知事としてふさわしくないと都議会の議員、現在の議会の方々が考えると、不信任案が出てくることも考えられる。もちろん、私が議会を解散するには、まず不信任(案)が出なければいけないというのは、当然承知している」
と述べるにとどめたが、現実的に小池氏がどのような手を打てるかははっきりしない。早くも知事経験者からは公約が現実的ではないとの声が相次いでいる。松井一郎大阪府知事はツイッターで、
「都議会解散!?知事にそんな権限はありません。あれば、橋下知事時代にやっていますよ。最初からありえない公約で大丈夫なんでしょうかね」
「本気でやる根性あるかなー。永年の自民党議員としてのしがらみを全部断ち切ってやるでしょうかね」
などと実現性を疑問視。橋下徹・前大阪市長も、松井氏のツイートに返信する形で
「あそこまで都議会との対決姿勢を宣言すれば、自ら地域政党を作るしかないでしょう」
と応じた。橋下氏も、
「小池さん、記者会見では不信任がなければ解散できないとも。ただそうであれば自らの公約には掲げられないはず。だって自ら不信任に値することをやるという宣言だから。これは都議会と対決するという有権者向けメッセージだね」
「都民の信頼を得ていない都議会を成敗しますよ、という有権者向けのメッセージでしょうね。議会と対決してでも改革断行!よりも議会解散!の方がメッセージが強いですから」
「冒頭解散の実行性・可能性は0ですね。そういう意味ではいきなり公約違反」
などとして、小池氏が強いメッセージを与えることには成功したとしながらも、現実的には都議会は解散できないため、公約違反につながりかねないとの見方を示した。