東京・内神田にある老舗の蕎麦屋「満留賀」が閉店した。
店主は蕎麦アレルギーを患っており、症状が悪化したことがその理由。インターネットでは、驚きとともに、「あまりに切ない」との声があがっている。
113年の歴史に幕
明治36(1903)年創業の内神田の蕎麦屋「満留賀」が2016年6月24日、突然その暖簾を下ろした。
店には1枚の貼り紙。そこには、
「お客様にお知らせ
日頃から格別のお引き立てを賜り誠に有難う御座います。
この度、店主、蕎麦アレルギー悪化により、下記の通り一時閉店さ
せて頂くことになりました。
明治36年(1903年)より神田の地に来て113年に亘り、永い間ご愛
顧いただきました皆々様に心から厚くお礼申し上げます。
誠にありがとうございました。」
と、昔の写真を添えて記している。
閉店の理由は、なんと4代目店主の竹本伸之さんの蕎麦アレルギーの悪化だ。
7月7日、店側に取材すると、家族は「当初は本人も(蕎麦アレルギーとは)気がついていなかったようですが、5、6年前から手が荒れてきたりして、痛かったようです」と話した。
徐々に手や肌の痛みがひどくなり、「昨年(2015年)の暮れには『年越しそばも今年が最後になるかもしれない』とこぼしていましたから、おそらく本人は大変だったのでしょう」というから、店主もすでに蕎麦アレルギーであることはわかっていたようだ。
医師に診てもらったところ、「生命に危険が及ぶ可能性がある」と指摘され、閉店を決断した。
インターネットには、
「そ、そんなつらい閉店理由ってあるの......」
「えええ!『満留賀』って老舗でしょ。お客も悲しいけど、ご主人も辛いでしょう」
「これは悲しい... でも誰にもどうしようもないし、誰が悪いわけでもない」
「今まで闘ってきたってことですね。今はお大事にとしか言えません......」
「こんなの、あまりに切なすぎるだろ」
といった声が多く寄せられている。
店の貼り紙には、「一時閉店」とあるが、家族によると「(蕎麦アレルギーが)ひどいので、おそらく(店を)もう開けることはないと思います」と話している。
じつは多い、店主の蕎麦アレルギー?
「蕎麦」は、そばがきやそばぼうろ、そば饅頭、そば茶などでも食されており、日本人にとって、なじみ深い食品。消費量も多い。
一方、蕎麦アレルギーの人も少なくないようで、蕎麦を食べたり、飛散したそば粉を鼻から吸い込んだりすることでアレルギー症状を引き起こす。蕎麦は、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状を引き起こす傾向が高く、命にかかわるケースもあることから、とくに注意が必要な加工食品としてアレルギー表示が義務づけられている。
蕎麦アレルギーがあるという40代会社員の男性は、「ちょっとしたことでも発症すると思うと、(蕎麦には)近寄りたくないですね」と、外食時にはかなり気を遣うと話す。蕎麦屋では、そばとうどんが同じ釜で茹でられている場合があり、そば粉が混入した湯で茹でたうどんを食べただけで、唇が腫れるなどの症状が出ることもあるようだ。
とはいえ、ふだんからそば粉にふれている蕎麦屋の店主が「蕎麦アレルギー」を理由に店を閉めることなど、これまでにあっただろうか――。日本蕎麦協会によると、「閉店時に、その理由をはっきり明記する店主ばかりではありませんから、なんとも言えません」という。そのうえで、「ただ、蕎麦屋の店主に、蕎麦アレルギーの人がいるのは事実です」と話す。
J-CASTニュースの取材に答えた「満留賀」の家族も、「うちの家系は体質的に蕎麦アレルギーなのかもしれません」と漏らし、店主以外にも蕎麦アレルギーを患っている家族がいるという。
インターネットにも、
「知人の蕎麦屋の息子も蕎麦アレルギーなんだよなぁ...」
「わたしの祖父も蕎麦アレルギーだけど、蕎麦屋やってた」
「蕎麦屋の跡取りが蕎麦アレルギーもあるよなぁ。日常的にふれないわけにいかないから大変だよね」
といった声がある。