殺人と強姦致死の罪で起訴された米軍属の被告が「沖縄の人の裁判は受けない」と東京地裁への移管を請求したことが分かり、ネット上で議論になっている。
移管を請求したのは、元米海兵隊員のシンザト・ケネフ・フランクリン被告(32)だ。
弁護士は、県民から選ばれる裁判員に懸念示す
起訴状によると、シンザト被告は2016年4月28日夜、沖縄県うるま市の路上で会社員女性(20)を乱暴しようと、頭を背後から棒で殴ったうえ、草むらに連れ込んだ。さらに、ナイフで首などを刺して抵抗できないようにしたが、目的を遂げられないまま女性を殺害したとしている。
シンザト被告は、那覇地裁で沖縄県民による裁判員裁判を受けることになったが、弁護人を務める弁護士が2016年7月4日、県内で記者会見を開き、管轄移転を最高裁に求めたことを明らかにした。
報道などによると、弁護士は会見で、シンザト被告が自白した内容が大々的にメディアに取り上げられ、沖縄県民が予断を持って見ていると主張した。沖縄の全市町村議会が抗議の決議を行い、政治団体が「黙秘するな」と警察前で抗議するなどしており、裁判員の審理に影響を与えかねないともした。
シンザト被告も、「沖縄の人は敵意に満ちており、公平な裁判を受けられない」「反基地感情を自分一人で背負えない」などと訴えているという。
今回、弁護士が根拠にしたのが、刑事訴訟法第17条2項だ。そこでは、「地方の民心、訴訟の状況その他の事情により裁判の公平を維持することができない虞(おそれ)があるとき」は、被告人でも移管請求ができるとされている。
シンザト被告の請求について、ネット上では、疑問や批判の声が相次いでいる。
専門家は、裁判員裁判でも最高裁は却下との見方
「何処で裁判をしても結果は同じだと思う」「かえって心証悪くなるだろこれ」「不服があれば控訴し上告すれば良いだけの話」
一方、シンザト被告を理解する向きもあり、「裁判員が沖縄県民だったらそうだよなぁ...」「周りの県民に様々なプレッシャーを受けそうだ」といった指摘が出ていた。
裁判所の移管請求をしたケースとしては、1995年に沖縄県で起きた女児暴行事件で米兵被告の家族が論告求刑公判の直前で県外にするよう求めたことがある。しかし、最高裁が翌年、請求を却下する判断を下している。
今回は、このときと違って裁判員裁判になるが、違う判断になることはあるのか。
板倉宏日大名誉教授(刑法)は、次のように言う。
「裁判員裁判であっても、最高裁は請求について厳しい判断をするでしょうね。沖縄で起きたことですので、沖縄でやるのは当たり前で、被告が主張することは理由にならないと思います。それに、たとえ裁判所を変えたとしても、かなり酷い事件であり、結果が違うことはないはずですよ」