「やっぱり、俺には無理!」と禁煙に失敗し、すぐあきらめる人に朗報だ。世間一般では、禁煙に成功するまでは5~6回挑戦するのがフツーと考えられているが、実際に成功した人の大半は30回近く試みていることがわかった。
また、44歳までに禁煙できれば、まったく吸わない人とほぼ同程度までに寿命(平均余命)を回復できるという。
禁煙に成功するまで30回の失敗は覚悟せよ
この2つの研究をまとめたのは、ともにカナダ・トロント大学のチーム。最初の研究は、英医師会誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」(電子版)の2016年6月9日号に発表された。
研究チームは、同国オンタリオ州の禁煙プログラムに参加した1277人の男女を対象に最大3年間追跡調査した。6か月おきに禁煙したかどうかや現在の喫煙状況、禁煙への挑戦回数などを聞き取り調査した。そして1年以上タバコを吸わなかった場合のみを「禁煙成功」と見なした。
その結果、禁煙に成功した人は142人いた。そして、最新の統計モデルを使ったデータを分析した結果、成功した人も失敗した人も平均で30回近く禁煙を試みていることがわかった。従来の調査では、5~7回が多いが、それは禁煙に成功した人だけを対象に、記憶に基づいて挑戦回数を聞いているためで、実際よりかなり低く数字が抑えられているという。
研究チームのマイケル・チャートン博士は「禁煙の挑戦回数は、どの程度の試みを『挑戦』ととるかによって大きく違ってきます。ほんのちょっとやめただけか、数日間続けてみたのか、統計の取り方によって、私たちの研究でも6回から142回まで大きな差が出ました。私たちは、あやふやだった基準を客観的に決めて統計をとり直した結果、みんな30回ほど挑戦していることがわかりました。禁煙したい人は30回以上試みることを覚悟するといいでしょう」と語っている。
34歳の禁煙で10年、44歳で9年、54歳で6年寿命が伸びる
もう1つの研究は、英医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(電子版)の2013年1月24日号に発表された。研究では、米国健康調査に登録されている25歳以上の男女約20万2000人のデータを対象に、喫煙歴および禁煙歴と死亡率(平均余命)の関連を調査した。
その結果、次のことがわかった。
(1)まず、男女とも、喫煙者はタバコをまったく吸わない人に比べ、平均余命が10年以上短くなる。タバコをまったく吸わない人は、80歳まで長生きする確率が喫煙者の2倍になる。
(2)しかし、禁煙すると平均余命を伸ばすことができる。重要なことは、禁煙開始年齢が若ければ若いほど平均余命が長くなることだ。
(3)その割合は、喫煙を続けた人に比べ、25~34歳で禁煙した人は平均余命が10年長くなり、35~44歳で禁煙した人は9年、45~54歳で禁煙した人は6年、55~64歳で禁煙した人は4年長くなる。
つまり、34歳までに禁煙すると、まったく吸わない人とほぼ同じに、44歳までに禁煙すると、1年程度しか違わないほど平均余命が回復するのだ。
研究チームのプラブハット・ジャハ博士は「40歳前後までに禁煙すれば、それまでの喫煙で失われた寿命をほぼ取り戻すことができるのです。なるべく早く禁煙を始めましょう」と語っている。