緑茶には、心臓病や脳卒中、インフルエンザになるリスクを減らし、最近はダウン症の症状を改善するという研究まで出されるなど、多くの健康効果が明らかになっている。
新たに、緑茶を毎日飲むと認知症になりにくいという研究が発表された。金沢大学大学院の山田正仁教授が、2016年6月8日に開かれた日本老年医学会学術集会で報告した。
ポリフェノールがアルツハイマー病抑える可能性
山田教授が調査の対象にしたのは、石川県七尾市中島町で実施されている「なかじまプロジェクト」と呼ばれる認知症予防に取り組む地域の住民たちだ。「なかじまプロジェクト」は、中島町の住民が定期的に脳検診を受け、認知症の早期発見に努める一方、検査データや生活習慣の記録を医療機関に提供し、認知症治療の研究に役立ててもらおうというもの。
今回の研究では、認知機能が正常な60歳以上の男女723人を5年間追跡調査した。そして、緑茶を飲む習慣と認知症(軽度の認知障害を含む)の発症リスクの関連について調べた。その結果、緑茶をまったく飲まない人に比べ、週に1~6日飲む人は、認知症の発症リスクが53%減った。毎日飲む人は68%も減ることがわかった。
山田教授によると、認知症患者の約7割はアルツハイマー病で、緑茶に含まれるロスマリン酸などのポリフェノール(植物由来成分)がアルツハイマー病の発症を抑えている可能性があるという。アルツハイマー病は、加齢とともにアミロイドβ(ベータ)タンパク質が脳組織の中で凝集して塊(かたまり)を作り、脳が萎縮して発症する。
アルツハイマー病になったマウスを使った実験では、ロスマリン酸などを含んだエサを食べさせると、アミロイドβタンパク質の凝集を抑え、すでにできた塊も減らすことが確認された。また、試験管の中にアミロイドβタンパク質を入れ、ロスマリン酸を加えると、塊がバラバラになり、塊が出る毒性も軽減された。