「アベノミクス失敗みとめろ」「憲法改悪の野望を砕く」――。こんな挑戦的なフレーズが並ぶ日本共産党の選挙広告が、共産党に批判的で保守的な論調で知られる「産経新聞」に掲載されたことが、ネット上で話題を広げている。
広告は煽り文が並ぶ週刊誌風のデザイン。「安倍(晋三)政権+αよ。この声がきこえないのか!」という挑戦的な呼びかけが目を引くほか、志位和夫委員長の写真も大きく印刷されている。
第2社会面の下半分近くを占める
2016年7月3日付産経新聞朝刊の第2社会面に掲載されたのは、紙面の下半分をほぼ埋め尽くす「大型広告」だ。共産党が7月10日投開票の参院選に向けて作成したもので、比例代表の投票を呼びかける内容。
広告では、原発再稼働反対やTPP阻止、沖縄の米軍基地撤去といった党の主張を週刊誌の見出し風に列記している。さらには、
「『アベノミクスが争点』で国民だましか? 憲法改悪の野望を砕く」
「憲法違反の戦争法 本気でなくす方法はコレだ」
「アベノミクス失敗みとめろ!消費税10%はあきらめよ」
などと与党を「攻撃」するような文言も数多くみられる。
こうした内容の広告が、安倍政権に総じて「好意的」な保守論陣を張る産経新聞に掲載されたことで、ネット上では「読者にケンカ売ってる」などと話題を呼ぶことになった。ツイッターやネット掲示板には、
「産経の読者が共産党の広告見たからって投票するとは思えない」
「敵地に攻め入って宣伝を繰り広げることも時には必要」
「産経読者にも今の自民党は支持しない人がいるだろうし意外と効果があるかもね」
などと賛否の分かれた反応が出ている。
また、産経新聞政治部が16年5月に『日本共産党研究――絶対に誤りを認めない政党』という共産党に批判的な内容の書籍を出版していることを引き合いに、「ついこないだ共産党の正体とか出したばっかだろ」と呆れるようなコメントも出ていた。
共産党「読者数などを基準に、費用対効果で考えています」
共産党広報部は7月4日のJ-CASTニュースの取材に対し、「(産経新聞の)読者には保守層が多いことは認識している」と話す。広告の掲載理由については、
「保守的な考え方を持つ人たちの間でも、共産党への関心は広がっていると考えています。そうした層に党の考え方をアピールする目的で、産経新聞に広告を掲載しました」
と説明する。実際、共産党が産経に選挙広告を掲載するのは今回が初めてではない。広報担当者によれば、14年の第47回衆院選と13年の第23回参院選でも広告を掲載したという。
新聞への広告展開については、「もちろん産経だけでなく、ほかの全国紙(編注・朝日、読売、日経、毎日の4紙)にも幅広く掲載したいと考えている」と話す。確かに、6月26日付の朝日・読売・毎日3紙(いずれも東京本社版)にも、全く同じ内容の選挙広告が掲載されている。
ただ、産経には第2社会面に紙面の約半分を埋める広告を出している一方で、ほかの3紙では紙面の3分の1ほどと一回り小さいサイズ。掲載面も、「囲碁・将棋」(朝日)、「くらし」(読売)、「くらしナビ」(毎日)と、社会面に比べ閲読率が低い面となっていて、産経での扱いが際立っている。掲載紙ごとの違いについて広報担当者は、
「読者数などを基準に、費用対効果で考えています」
と説明した。
一方、産経の読者からは、広告の内容にどのような反応があるのだろうか。J-CASTニュースは同社広報部に対し、幾つかの質問をしたが、「読者から問い合わせは寄せられているか」との質問には、「個別の広告内容等についてはお答えできません」との回答だった。