せっかく勉強したことを忘れないようにするにはどうしたらよいか。学習後に運動をすると記憶が定着することが、英エディンバラ大学とオランダ・ラドバウド大学の合同チームの研究で明らかになった。
ただし、覚えておくためには「適切なタイミングでの運動」が効果的だ。学習直後ではダメだそうで、4時間後くらいが望ましいという。
パソコン作業の後エアロバイクを35分間こぐ実験
この研究は、国際生物学誌「カレント・バイオロジー」(電子版)の2016年6月16日に発表された。
研究チームは、72人の被験者に、40分をかけてパソコン画面上に表示された90枚の画像と、それが表示された場所を暗記する作業をしてもらった。その後、72人を次の3のグループに分けた。
(1)暗記作業後ただちに運動するグループ。
(2)暗記作業後4時間がたってから運動するグループ。
(3)運動をしないグループ。
運動は、エアロバイク(固定自転車)を、最大心拍数の80%までの強度で、35分間こぎ続ける激しいもの。そして、暗記作業の48時間後に、暗記した内容をどれだけ覚えているかテストを行なった。同時にMRI(磁気共鳴画像)を使い、テスト中の被験者の脳の活性化状態を検査した。
その結果、暗記作業から4時間後に運動したグループの成績が、ほかの2つのグループに比べ、最も良かった。また、MRIの画像からも、記憶と学習にかかわる領域である海馬が活性化していることが確認できたという。
運動すると分泌されるドーパミンが記憶を定着
ところで、なぜ暗記してからしばらくたった後に運動すると、記憶力が高まるのだろうか。これまでの研究では、運動するとドーパミンやノルアドレナリンなどの神経ホルモンが副腎から活発に分泌されることが知られている。また、マウスを使った迷路の実験では、ドーパミンやノルアドレナリンが増加すると、記憶力の成績が向上することが確認されている。
ラドバウド大学のギーエン・フェルナンデス博士は、米インターネットニュース「ハフィントンポスト」の取材に対し、「激しい運動によってドーパミンなどが急激に分泌され、それが記憶力の定着に役に立ったのだろう」と語っている。
しかし、なぜそれが4時間後なのか。もっとほかにいい時間はないのか。たとえば2時間後や6時間後ではどうなのか。この問いに対して、同博士は「今回は4時間後しか調べませんでした。最適な時間を見つけるために、さらなる研究を進めます」と答えている。