無料なはずの救急車で支払い請求 搬送中の車内で何が起こったか

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   「『救急車に乗ってきた』という理由で、友人が病院から料金を請求された」という記事が、ニュースサイト「Excite Bit コネタ」に2015年7月19日付で掲載された。この記事を基にしたスレッドが2016年6月28日、ネット掲示板サイトに立てられると、「救急車は有料なのか」と議論になった。

   日本国内では通常、救急車は無料のはずだ。支払いを求められたのは、何か事情があったのだろうか。

  • 救急車に乗ったらお金がかかる…?
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救急車を呼ぶこと自体は無料だが...

   救急車の運用を管轄する総務省消防庁救急企画室の担当者は、J-CASTヘルスケアの取材に対し

「救急車を呼んだこと自体に料金が発生することはありません。無料です」

と答えた。ただ、「加算で病院がお金を取ることはあり得ます」という。救急車には通常、救急救命士が乗っているが、医師が同乗するケースもある。そのため救急車の出動そのものでなく、車内で医師によって行われる医療行為に対して、請求が発生する可能性がある。

   そこで、医療制度を管轄する厚生労働省に取材すると、同省保健局医療課の担当者は、

「診療上の必要性があって医師が同乗し、救急車内で診療行為を行った場合、『救急搬送診療料』として診療報酬1300点が算定されます」

と話した。加えて、

「患者が新生児なら1500点、6歳未満なら700点の診療報酬を加算します。また、診療時間が30分を超えた場合も700点が加算されます」

という。

   診療報酬は、1点あたり10円で計算される。そのうち患者の負担割合は、75歳以上が1割、小学生未満と70~75歳は2割、それ以外は3割。これに応じて、患者が実際に負担する金額が決まる。例えば、救急車内で5歳児が40分間の診療行為を受けたら、救急搬送診療料2700(1300+700+700)点×10円=2万7000円の2割を患者が負担するので、5400円が加算されることになる。

   具体的に救急車内でどのような診療行為が行われるかについては「ケースバイケースで医師が判断します」とだけ答えた。なお、今回ネットでの議論のきっかけとなった、救急車に乗って「友人が病院から料金を請求された」と書かれていた記事には、車内での医療行為に関する具体的な記述がなく、詳細は分からなかった。

   「診療上の必要性」は、救急車内で医師が個別のケースごとに判断するので、患者によっては不当な判断で診療がなされ、救急搬送診療料を払ってしまったのではないかと疑問に感じる可能性もなくはない。こうした場合のために、全国8つの地方厚生局が窓口となり、適切な判断のもとに診療行為がなされたかについて患者からの相談を受け付けている。

「蚊に刺された」「日焼けした」で呼ばないで

   一方で、救急車の利用自体を有料化しようとの議論もある。財務省の財政制度等審議会が2015年5月、「軽症なら有料化すべきではないか」と財務相に提言した。救急車の出動件数は増加を続けており、2013年は過去最多の591万件。半数が軽症者だった。患者最寄りの消防署にある救急車が軽症者の搬送に追われると、重症者への初動対応が遅れる可能性があると指摘されている。そのため、有料化して不要不急の救急車の出動を減らそうというのだ。

   ただ、前出の消防庁担当者は「有料化の前にやることがある」として、「救急車の適正利用を促しています」と話した。同庁はウェブサイトで「救急車利用マニュアル」を公開し、119番通報の際のポイントを説明している。

   たとえば、「ためらわず救急車を呼んでほしい症状」としては「意識の障害」「大量出血」「食べ物をのどにつまらせた」がある。逆に「本当に(救急車が)必要か考えてみましょう」として、「蚊に刺されてかゆい」「海水浴に行って、日焼けした足がヒリヒリする」「病院で待つのが面倒なので」といった、過去実際にあった事例も記載している。

   海外では、救急車を有料化している国や都市がある。外務省のウェブサイトによると、米ニューヨークでは600ドル(約6万円)。フランスでは基本料金60ユーロ(約6800円)に、移送距離1キロごとに2ユーロ(約230円)が上乗せされる。

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