山陽新幹線で2016年6月30日、停電が原因で最大で約5時間にわたって運転を見合わせるトラブルがあった。その犯人は、意外にも「塩分」。絶縁不良でショートが起こった可能性がある。
実はこういった「塩害」による停電は、鉄道に限らす過去にもしばしば起きている。
4キロ先の海からトンネル内に吹き込む塩分
JR西日本によると、停電は6月30日の早朝5時30分頃、厚狭-新下関間にある石原トンネル(山口県下関市)で起きた。この影響で山陽新幹線は始発から一部区間で運転を見合わせ、通常速度での運行が再開されたのは11時19分だった。計50本が部分運休や運休になり、100本で最大約5時間35分の遅れが出た。2万1400人の足に影響が出た。東海道新幹線でも、20本の列車が最大1時間遅れた。
停電の原因とみられているのが、「がいし」と呼ばれるトンネルの壁と架線の間にある絶縁部品だ。がいしの表面に塩分などがつき、絶縁不良になってショートした結果、停電になったらしく、トンネルにある9か所のがいしを掃除したところ、復旧した。直近では6月9~10日に目視で検査したが、特に異常は見つからなかったという。
石原トンネルは海から4キロ程度離れているが、この20日間で、風に乗って塩分が運ばれるなどして、がいしに塩分が付着したようだ。下関市内では6月28日から30日にかけて雨が降っていたが、トンネル内のため、雨で塩分が流されなかった可能性がある。
台風で海水が電柱にかかって停電になるケースも
「がいし」をめぐる問題は、過去にもしばしば起きている。03年2月には、兵庫県北淡町(現・淡路市)で、約900世帯が約2時間にわたって停電。電柱のがいしに海風の塩分がついたことが原因でみられている。
1998年9月に東日本を襲った台風5号では、海水が電柱に「しぶき」になってかかり、雨が降らないまま水分が蒸発。台風通過後に電柱から火花が出たり、合成樹脂のカバーが燃えたりするトラブルが相次ぎ、千葉県勝浦市では約400戸が5時間も停電した。
1991年の9月に中国地方を襲った台風19号では、同様の理由で約20万戸が数日間にわたって停電している。