片頭痛の原因は、心臓に開いている「穴」だった?
実は、片頭痛と心臓病の関連が指摘された研究は、これが初めてではない。2010年2月に発表された米アルバート・アインシュタイン医科大学の研究によると、片頭痛の人は、そうでない人に比べ、心臓発作を起こすリスクは2倍高い。また、片頭痛には前兆を伴うタイプと伴わないタイプの2種類がある。前兆には、チラチラする光、ギザギザに走る光などが見える神経症状を起こす人が多い。こういった前兆を伴う片頭痛の人は、心臓発作を起こすリスクがさらに3倍に跳ね上がった。
なぜ片頭痛の人は心臓病になりやすいのだろうか。両研究とも因果関係を説明していないばかりか、片頭痛の原因自体に定説がないので、はっきりしたことはわかっていない。ただ、アルバート・アインシュタイン医科大学の研究では、同時に行なった調査で、片頭痛の人はそうでない人と比べ、糖尿病や高血圧、高脂血症、肥満などの危険因子を持つ率が約50%高かったという。片頭痛の人にはもともと心臓病になりやすい体質の人が多いようだ。
ところで最近、片頭痛と心臓の意外な関係が明らかになった。2015年5月、岡山大学が片頭痛患者の治療のため、心臓に開いている穴をふさぐ手術(カテーテル方式)を行なうと発表した。それによると、心臓には4つの部屋があるが、胎児が胎内にいる間は右心房と左心房を隔てる壁に「卵円孔」(らんえんこう)という小さな穴が開いているという。普通は出産前に閉じてしまうが、約15~25%の人は「卵円孔」が開いた状態で生まれ、成長する。
普通なら心臓に戻ってきた血液は肺に送られ、不要物を取り除いた後、酸素を取り込み、体のすみずみに行き渡る。しかし、「卵円孔」が開いていると、血液がそのまま穴を通って脳や体中に送られてしまう。穴が大きすぎると、静脈にできた血栓(血の塊)が穴を通って直接脳に送られ、脳梗塞を起こす恐れがある。片頭痛も穴を通過した血液内の不純物が原因とみられるのだ。
特に、「チラチラ光って見える」などの前兆は、脳の視神経の中枢をこうした血液が刺激している可能性がある。「前兆のある」片頭痛の人で穴が開いている人の割合は、「前兆のない」片頭痛の人や、片頭痛ではない人の約2倍というデータもある。
岡山大の調査によると、過去に脳梗塞の治療のために「卵円孔」をカテーテルでふさいだ人の半数が片頭痛の持ち主だった。しかも、そのほとんどが穴をふさぐと片頭痛が消失、または改善した。つまり、心臓に開いた穴(卵円孔)が、片頭痛を引き起こすと同時に、脳や心臓の病気を引き起こしている可能性があるわけだ。