母乳で育った子は発達障害になりにくい 赤ちゃんの心の成長に驚きのパワー

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母乳成分には数億年の進化の神秘が...

   なぜ、母乳が子どもの心の健康にまでいい影響を与えるのだろうか。両方の研究とも明確な因果関係を説明していない。そもそも「行為障害」や「注意欠陥多動性障害」の原因さえはっきりしていないからだ。しかし、専門家のウェブサイトをみると、「母乳と人工ミルクの成分の違いというより、直接お乳から授乳する行為が、赤ちゃんの心にいい影響を与えているのではないか」と指摘する声が多い。生後間もない頃の母親との密接なスキンシップが、赤ちゃんの心の成長を促しているというわけだ。

   ところが最近、母乳の成分にも神秘的な働きがあることが明らかになった。2016年5月、スイス・チューリッヒ大学のチームが、母乳の中に含まれている特殊な糖分が赤ちゃんの腸内細菌を改善していると発表したのだ。それによると、ウシやマウスの母乳には30~50種類の糖分しかないのに、人間の母乳には200種類以上の糖分があるという。

   赤ちゃんは最初、無菌状態で生まれるが、生後1週間で数百億個もの細菌が腸内に住むようになる。赤ちゃんは母乳の糖分の大半を消化できないので、文字通り、糖分は腸内細菌のためにある。これらの糖分が腸内細菌のエサになり、母親から引き継いだ善玉菌を増やし、有害な細菌を駆除し腸内細菌の環境を整えているという。しかも、200種類以上の糖分は赤ちゃんの成長とともに組成を変えていく。腸内細菌の状態をよくするよう、「エサ」の中身を変える複雑な働きをしているのだ。

   研究チームのティエリー・へネット博士は「最初の1か月で赤ちゃんの腸内細菌の環境がいちおう整い、免疫システムが発達し始めると、これら細菌のエサの糖分は急激に減って、今度は赤ちゃんのために脂肪などの栄養素が増加します。200種類の糖分のどれが、どの細菌を増やすのかはまだ謎です。しかし、母乳は数億年の進化のたまものであり、赤ちゃんのために最適になるような成分に発達してきたことは間違いありません」と語っている。

   腸内細菌は免疫能力を高めるなど健康に貢献する一方、状態が悪化すると、糖尿病などの生活習慣病を引き起こしたり、うつ病などの精神障害を発症させたりすることが最近の研究でわかってきた。「行為障害」や「ADHD」との関連はまだ指摘されていないが、赤ちゃんの心の発達のためにも母乳が一番なのは確かなようだ。

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