包茎手術をめぐってトラブルが多発している。「施術部分が裂けた」「大量出血した」といった被害に加え、「組織が壊死した」「勃起障害になった」という報告まで国民生活センターに寄せられている。
実は、包茎でも手術が必要なほど重症なケースはほとんどないようだ。
多くの場合は清潔にしていれば問題ない
国民生活センターが2016年6月23日に発表した調査結果によると、包茎手術について同センターが相談を受けた数は、過去5年間で1092件。男性の美容医療サービスの相談全体(2131件)の過半数に上る。手術後、機能障害や後遺症を発症した、尿道が欠損して再建手術をした、といった症例もあったという。
1092件のうち、20代が646件と6割、次に30代が240件と2割を占めており、若い世代の相談が多かった。なかには、インターネット広告を見て包茎手術を扱うクリニックや病院を訪ねたら、即日施術を受けるよう迫られたり、広告よりも高額な費用を請求されたりした、という報告もあった。
同センターによると、相談の多くは「仮性包茎」の治療だった。仮性包茎は、普段は亀頭が包皮に覆われているものの、手でむける状態のこと。勃起しても覆われている場合があるため不安に思う男性が多いが、多くの場合は清潔にしていれば問題ないと調査報告の中に書かれていた。
包皮の内側は湿気が多く尿も通るため、雑菌をもったカスがたまりやすく、これが炎症や感染症をもたらす。しかし、東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター泌尿器科のウェブサイトによると、仮性包茎は簡単にむけるため、風呂場で洗い流せば衛生状態を良好に保てる。このため、「仮性包茎では手術は必要ありません」という。
危険なのは「真性包茎」、つまり手で包皮をむけない状態にある場合や、「カントン包茎」という、むけるが包皮先端が狭くて血流が悪くなっている場合だ。包皮内を洗えないため感染症にかかりやすく、放置しておくと性機能障害や陰茎がんのリスクもある。
ただ同病院では、真性包茎の場合でも、6か月間はむく練習や軟こうを使った治療を施し、これで多くの人が改善されるという。それでも治らない場合に初めて、少しだけ切開する手術を行うことになる。
他の病院のウェブサイトをみると、医療法人圭成会・大分泌尿器科病院では「仮性包茎はコスメティック(見た目)な問題以外、医学的に手術の必要はありません」として仮性包茎手術自体を扱っていない一方、真性包茎の手術は行っている。東京医科歯科大学大学院・腎泌尿器外科学教室は、「亀頭がまったく露出できない場合は、まれに腫瘍を合併することがあるため、一度、泌尿器科の受診をお勧めします。仮性包茎は基本的に心配ありません」という。仮性包茎で手術を迫るような記述は見当たらない。