「プラセボ効果」(プラシーボ効果)という言葉がある。本来は薬効として効く成分がない薬を飲んだにもかかわらず、「薬だ!」と信じた患者の病気が快方に向かうことを指す。人間の体と心理の不思議さを表わしている。
科学的な効果をうたう様々な脳トレーニング法が大流行しているが、その効果の一部は「プラセボ効果」かもしれないことを示す研究がまとまった。
効果がないはずの脳トレなのに「自己暗示」をかけると...
米バージニア州にあるジョージメイソン大学のサイラス・フォロー博士らのチームが、「米科学アカデミー紀要」(電子版)の2016年6月20日号に発表した。フォロー博士は、非常にユニークな方法で脳トレが自己暗示にかかりやすいことを証明してみせた。
まず、大学キャンパス内で異なる2種類のビラを配布し、50人の被験者を集めた。1つのビラには「脳トレーニングと認知能力向上の研究である」とうたい、「作業記憶トレーニングによって流動性知能が向上することが多くの研究で示されている」とアピールした。「流動性知能」とは、人間が生まれながらに持っている新しい環境に適応するための能力で、30歳代をピークに加齢とともに低下していく。一方に「結晶性知能」がある。経験や学習によって蓄積された能力で、2つの能力が人間の知能の両輪といわれる。
もう1つのビラには、脳トレーニングについては何も書かずに、単に研究への参加を募る内容にした。