元防衛相の自民党・小池百合子衆院議員(63)が東京都知事選(7月14日告示、31日投開票)に名乗りを上げ、名前が挙がっている著名人の中で先陣を切った。しかし、党内はまとまっていないと報じられており、戸惑いが広がっている。
「東京をアベノミクスの第3の矢、成長戦略のけん引役にしたい」。小池百合子氏は、衆院議員会館内で2016年6月29日に行った出馬会見でこう強調した。
「アベノミクス」支持打ち出し、党内の異論をけん制?
小池氏は、自民党議員として出馬を決めたと会見で説明しており、都知事として党の政策を支えたい立場を明確にした形だ。
しかし、自民党東京都連は、舛添要一前都知事の政治資金問題を受けて、問題が出にくい「非国会議員」で調整し、中でも、前総務事務次官の櫻井俊氏(62)を推す声が強いと報じられている。
そんな折の突然の出馬表明だけに、記者からは、「自民党から推薦や公認がなくても出馬するのか?」という疑問が出された。これに対し、小池氏は、「党内のしかるべき方には相談した」としながらも、「情勢を見極めたい」と繰り返す。所属する自民党都連の支援方針について聞かれると、「一切ない」と否定し、これから依頼したいと明かした。
党内の支持が十分でない中で表明したのは、「アベノミクス」を人質に取ることで党内の異論をけん制する狙いがあるのかもしれない。もしそうだとすれば、したたかで計算高いとされる小池氏らしい戦略だ。
都知事選では、後出しジャンケンが有利とされる中で、異例の「先出しジャンケン」とも言える会見になった。
もっとも、小池氏のこうしたやり方については、都連から反発の声が相次いでいる模様だ。
「選ぶ選ばないは都民なんだけどね」
新聞各紙によると、自民党東京都連では、小池百合子氏の会見を受けて急きょ話し合いを持ち、ある幹部は、「まったく聞いていない。びっくりしている」とぶ然とした表情で語った。さらに、「応援することは150%ない」と言い切った幹部もいたという。
都連所属の萩生田光一・官房副長官も、6月29日の会見で、都知事選の対応を都連執行部に一任することになったのに、小池氏は執行部に相談なく出馬表明したとして「違和感を覚える」と語った。
しかし、最有力候補の櫻井俊氏は、この日のマスコミ取材にも「出馬はしません」と明言している。都知事の器ではなく、家族に迷惑をかけたくないというのが理由で、息子でアイドルグループ「嵐」メンバーの櫻井翔さん(34)への影響を考えてとも言われている。
ネット上では、小池氏の出馬表明に対し、「スタンドプレーだ」と疑問も出ているが、都連などへの風当たりの方が強い。「『話を通してない』とはなんという上から目線」「都議会のいいなりになるやつより、まし」「選ぶ選ばないは都民なんだけどね」などと書き込まれている。
もっとも、自民党も推す別の有力候補が出馬して分裂選挙などになる可能性は残っており、情勢は不透明だ。
なお、この日は、「在日特権を許さない市民の会」元会長の桜井誠氏(44)が都庁で会見し、無所属で都知事選に出馬することを表明している。