1円玉の製造枚数が急激に減っている。
2014年度には、消費税率が8%に引き上げられたこともあって1億6000万枚が発行されたが、翌15年度にはその3分の1にあたる5351万枚、16年度はじつに100万枚(計画ベース)にまで激減した。1円玉は、このまま消えてしまうのだろうか――。
2016年度はわずか100万枚
財務省は毎年、新年度に入るとその年度に製造する貨幣枚数を公表する。それによると、1円玉は2016年度に「100万枚」がつくられる計画だ。じつは15年度の計画では、当初8000万枚を製造するはずだったが、12月に改定されて5351万枚に減った。
財務省は、「市中に流通している状況を加味して(計画を)決めています。(これだけの枚数が)必要と考えたので発行しています」と話すが、それにしても100万枚は少ない。
2016年6月23日付のYOMIUIRI ONLINE、オピニオン「エンの下の力持ち 1円玉が消える?」で、一橋大学経済研究所の北村行伸所長は14年4月からの消費税率の8%引き上げで、「小銭の需要増を見込んで増産したが、思ったほど需要が伸びなかったため」と、発行枚数の減少理由を指摘している。
さらには、政府は2017年4月に予定されていた消費税率の10%引き上げを、19年10月まで延期することを決めた。消費税率が10%になると、たとえば100円の商品で10円の消費税と、キリがよくなる。そうなれば、1円玉を使う機会も減るとみている。
1円玉の流通枚数が減少傾向にあるのは事実のようだ。減少の最大の理由は、「電子マネー」の普及で小銭需要が減ったこと。日本銀行が2016年5月31日に発表した決済動向によると、16年3月末時点の電子マネー(プリペイド式IC型)の発行枚数は3億251万枚で、初めて3億枚を突破。電子マネーを決済に利用した件数は、前年同月比10.8%増の4億2900万件。決済金額は10.6%増の4258億円で、1件あたり992円が使われている。
この統計で集計している電子マネーは、交通系のSuica(JR東日本)やICOCA(JR西日本)、PASMO、楽天Edy、流通系のnanaco(セブン&アイ・ホールディングス)やWAON(イオン)などで、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、駅構内の売店などで利用できて、知らない人や持っていない人がいないほど。その普及に加えて、クレジットカードやデビットカード(銀行カード)の利用と、キャッシュレスで買い物などができる場面は急速に広まっていて、財布から小銭を取り出すことは少なくなった。
ただ、J‐CASTニュースの取材に、財務省は「電子マネーの普及が(1円玉の発行枚数の減少の)要因の一つと考えられてはいますが、明確であるとは言えません」と話す。
1円玉1枚つくるのに約3円かかるとの説
さらに、1円玉の製造が減少している要因には、原材料となるアルミニウムの価格の高止まりがある。前出の北村所長は、「1円玉を1枚つくるのに約3円かかっており、これも額面より製造コストのほうが高くついている」と指摘する。
たしかに、アルミニウムの価格は高止まりしている。2016年5月のアルミニウム価格は、2年前に比べれば安くなっているものの、1キログラムあたり169.11円の水準だ。
製造コストについて、財務省は「基本的に必要があると考えているので製造しています。そのため、(コストが)高くても安くても必要な枚数をつくっています」と、製造コストを理由に発行枚数を増やしたり減らしたりすることはないとしている。
とはいえ、なにやら1円玉は嫌われているようで、インターネットには、
「ズバリ、いらねぇよ。税金の無駄遣いwww」
「ほとんどカード決済してるから、そもそも小銭なんか財布に入ってねーよ」
「アルミ高騰で1円製造するのに1円以上かかるんだっけか。無駄だよ・・・」
「1円玉って、あの軽さが嫌だな。5円はまだ硬貨って感じあるけど」
といった具合。
その半面、
「でも、1円玉って偽造する人いないよね」
「1円玉は重さ1グラム、半径10ミリメートルだからね。何かの時に役に立つぞ」
「1円であめ玉でも買えるようにしてくれれば使うのになあ」
などと、1円玉を「応援」する声もないわけではない。
財務省は1円玉の製造について、「市中が必要とすれば、つくり続けます」とは言っている。