「水素水よりも、おならの方が多くの水素を含んでいます」――。法政大学の左巻(さまき)健男教授が、「おなら」を引き合いに「水素水」の有効性に疑問を呈したことが、インターネット上で大きな話題を集めている。
水素水の有効性・安全性をめぐっては、国立健康・栄養研究所が2016年6月10日に「信頼できる十分なデータが見当たらない」と否定的な見解を示したばかり。ネット上でも懐疑的な見方が大半を占めており、今回の左巻教授の指摘にも「屁でも吸ってた方が経済的だな」と賛同する声が相次いでいる。
「わざわざ水素水を飲む必要があるのか」
おならを用いて「水素水の有効性」に疑問を示す左巻教授は、理科・科学を専門とする教育学者だ。水素水については否定的な立場をとり続けており、過去に著した『ニセ科学を見抜くセンス』『水の常識ウソホント77』などの書籍でも、過度のブームに警鐘を鳴らしていたという。
そんな左巻教授の発言が注目を集めたのは、ニュースサイト「Suzie(スージー)」が2016年6月24日に配信したインタビュー記事がきっかけだ。
記事の中で左巻教授は、水素水よりもおならの方が「はるかに多量」の水素を含んでいると指摘。続けて、体内で多量に生成されている水素を摂取するために、わざわざ「水素水を飲む必要があるのか」との疑問を呈した。
人間が「いらないモノ」として排出する「おなら」の中に、多くの水素が含まれている――。こうした左巻教授の指摘は、水素水の効果に否定的なネットユーザーの間で大きな話題を集めることになった。ツイッターやネット掲示板には、
「水素水や水素ガス吸うくらいなら、その何千倍も水素濃度ある屁でも吸ってた方が効果的かつ経済的だな」
「水素水をありがたがって飲んでる連中は、屁を我慢すべきだよね」
などと揶揄する声が相次いで寄せられた。
「おならを吸うのはおすすめできません」
左巻教授は6月27日のJ-CASTニュースの取材に、「おならと水素水」をめぐる発言の意図を詳しく解説した。
左巻教授によれば、「大腸で生成されるガスの成分は、10~20%ほどが水素でできている」。そのうち、「おなら」として体外に排出されるのはごく一部。大部分は体内に吸収され、血液を循環している。過去には「大腸で生成された水素ガスが呼気中から確認された」という研究データもあるという。
実際、国立健康・栄養研究所が6月10日に発表した研究結果の中でも、「市販の多様な水素水の製品を摂取した効果については、体内で産生されている量も考慮すべきとの考え方がある」と言及されている。
左巻教授は「微量の水素しか含まない『水素水』を飲んだところで、どれだけ体内に吸収できるかも分からない」とした上で、「大腸で生成される水素に目を向けるべきでは」と提言していた。
なお、記者が「水素水よりもおならを吸う」との声がネット上に出ていることを伝えたところ、
「硫化水素やアンモニアなど、有害な物質を含んでいるので、おならを吸うのはおすすめできません」
と左巻教授は話していた。