「民業圧迫」批判などから大幅に圧縮されてきた経緯
今、政府が財投に着目するのは、日銀によるマイナス金利政策の「追い風」を生かそうという思惑からだ。金利が歴史的な低水準となっていることから、財投債の金利も低下し、貸出金利も下げられるというわけで、すでに財投の貸出金利の下限を現行の0.1%から0.01%程度に下げる方向を打ち出している。
もうひとつ、国と地方の借金が国内総生産(GDP)の2倍を超えるという危機的な財政状況の中でも、財投を使えば、税金を原資とする一般会計予算を傷めずに事業に金を回せることも、大きな誘因だ。安倍首相は消費税増税を2019年10月まで2年半延期すると決めた際、基礎的財政収支(社会保障費などの政策経費を税収でどこまで賄えるかを示す指標)を2020年度に黒字化するという目標の堅持を明言する一方、財政出動に積極姿勢を示した。「税収が増えている」(安倍首相)とはいえ、消費税先送りと財政出動は矛盾する方針だ。そこで、一般会計ではないが投融資の形で支出される公的資金である財投が財政出動の一形態として役割を果たすということだ。
もとをただせば、財投は郵貯や年金の資金を旧大蔵省の資金運用部を通じて自動的に流していた仕組みで、一般会計予算のように国会の承認が必要なく、政府の裁量で使えた。このため、1990年代の不況期に相次いで実施された経済対策でも活用され、事業規模を大きく見せる「膨らし粉」と揶揄されもした。
一方、非効率な事業にも資金が投じられたり、民間が手掛けられる事業も政府系金融機関が低利融資で取引をさらっていったりするなどの「民業圧迫」批判があった。このため、財投債による資金調達の変更(入口)と、政府系金融機関の再編など無駄な事業の整理(出口)という両面の改革を実施し、財投は1990年代後半の400兆円規模から、最近は150兆円程度に、大幅に圧縮されてきた経緯がある。