「写ルンです」で撮影しネットに投稿 若者はなぜ、わざわざそんなコトを?

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   1986年7月に発売された富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」が今(2016)年7月1日に発売30周年を迎える。一般的なカメラが数万円する時代で、当初は「使い捨てカメラ」とも称されたが、イメージが悪いことから、やがて「レンズ付きフィルム」に統一されていた。この人気が最近復活しているという。

   レンズ付きフィルムは、写真のフィルムにプラスチック製のレンズやシャッターを付けただけの簡単な構造で、ピントの調整など難しい操作をしないでもいい。富士フイルムは安価なカメラを作ろうと開発を進めたものだが、当初は難航し、「写真が撮りさえすれば良い」と発想を転換して、誕生にこぎつけたという。カメラでなくフィルムなので、数え方は「本」。1本1380円という安さもセールスポイントだった。

  • 再びレンズ付きフィルムの時代がやってくる?(画像はイメージ)
    再びレンズ付きフィルムの時代がやってくる?(画像はイメージ)
  • 再びレンズ付きフィルムの時代がやってくる?(画像はイメージ)

2012年にはピーク時の5%以下にまで

   翌年には海外にも展開し、その後もフラッシュ付きのほか、パノラマ撮影や白黒撮影ができるモデル、ゴルフスイングを8連写し1枚の写真に焼きつける「写ルンですGolf」など、2000年代半ばまで新製品を次々に開発しては市場に投入していった。今は新たな商品開発はしていないが、その種類は100近くに上った。その知名度と商品力によって、他社から数多く出た類似商品を寄せつけることなく、1997年のピーク時の出荷本数は8960万本にも達した。

   しかし、時代はデジタルカメラ時代に突入。デジカメやスマートフォンが普及し、2012年の出荷本数はピーク時の5%以下にまで低下。コニカやコダックは販売を終了、「写ルンです」も、「世間では既に商品はなくなっていると思われていた」(関係者)のは無理もないところだ。

   ところが、そこに朗報が届いた。2014年、国立科学博物館から「写真文化のすそ野を広げた」功績で「未来技術遺産」に登録されたのだ。これをきっかけに「写ルンです」が再認識されることになり、昔を懐かしんで再び手にする中高年が増加した。また、これ以前からも、シンプルな構造のために壊れにくく、「フラッシュなし」なら電池を使わないことなどから「実は高山や寒冷地など過酷な環境でも使われている」(同)という。

30周年記念「限定」キットも完売状態

   さらに、レコードやラジカセなどが再評価される最近のアナログ回帰の風潮も追い風となり、「写ルンです」を知らなかった若い世代が、デジカメにないフィルム特有の淡く柔らかい風合いに注目。現像と同時にデジタルデータ化してもらい、それをインスタグラムなどSNSで共有するようになった。

   ピンぼけしたり、写真に自分の指が写り込んだりといった失敗もあるが、「それも含めてアナログの味」と楽しんでいるそうだ。人気モデルらが使っていることがSNSなどで知られるところとなったことも後押しし、今では「おしゃれでかっこいい」などと、一部でファッションアイテム化しつつあるという。

   忘れられかけた存在から復活してきた「写ルンです」。今春には30周年を記念して限定発売されたアニバーサリーキットも既に完売状態。この人気がどこまで盛り上がり、また持続するか、注目される。

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