英国の欧州連合(EU)離脱が、遠く離れた日本で意外なところに影響している。国民投票での離脱派勝利が報じられた2016年6月24日昼ごろから、「人身事故」など、鉄道自殺に関するキーワードのGoogle検索件数、SNSでの言及件数が急上昇したのだ。
キーワードごとの検索件数の推移を調べることができるサービス「Googleトレンド」で調べたところによると、「人身事故」というワードの24日午前中の検索件数は、通常より少し多い程度でしかなかった。
市場パニックの直後から急増
ところが、国民投票での「離脱」優勢が伝えられた正午ごろから、その数字は急激に上昇する。Googleトレンドでは期間内の相対的な件数しかわからないが、離脱派の勝利がほぼ確実となった13時30分ごろには、前日23日のピーク時の6倍以上も、「人身事故」というキーワードが検索されていた。
もう1つ、検索件数が同じような推移をたどったのが、中央総武線の駅名である「新小岩」である。こちらも同じように昼ごろから検索件数が大幅に増加、前日の倍近い人が、その駅名を調べていたことが確認できる。
「人身事故」という言葉は近年、単なる事故だけではなく、鉄道自殺の隠語として使われることも多い。そして新小岩駅は、ここ数年鉄道自殺者が相次ぐ、一種の「名所」だ。
検索件数が急増した24日午後には、「離脱」のニュースを受け、一時円相場が1ドル99円台まで値上がり、さらに日経平均株価も1万5000円を割るなど、市場がまさにパニック状態に陥った。この混乱で、大損した個人投資家がよもや――と少なからぬ人が連想した結果が、この数字と見られる。
今のところ、実際の事故は...?
ツイッターなどSNSでも同様の傾向がみられる。24日に発せられた「人身事故」という言葉を含むツイートは、実に1万8000件近くに達し、これまた前日の6倍近い(Yahoo!リアルタイム検索より)。2ちゃんねるまとめブログなども「1日でもう4件も人身事故が発生している」、といった記事を掲載したり、上記の新小岩駅で「警戒運転」が行われているといったツイートが広まったりと、さまざまな情報が飛び交った。
もっとも、確認できる24日の人身事故はいずれも午前中のもので、今回の離脱との関係は薄そうだ。「警戒運転」についても元をたどると一個人の発言以外のソースはない。現時点では、「EU離脱で人身事故」は実体を持たない、幽霊のような噂に過ぎないようだ。