「教育水準の高い人ほど脳腫瘍になりやすい」という、400万人以上を対象にした調査結果が、英ロンドン大学小児保健研究所のアマル・カノルカル教授らの研究チームがまとめ、英の保健疫学専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health」(電子版)の2016年6月20日号に発表した。
しかし、理由については「まったくわからない」としている。
男性は、年収が多いほど致死率が高い脳腫瘍に
カノルカル教授によると、これまでも高学歴の人や高収入の人は脳腫瘍の発症リスクが高くなることを示す研究がいくつかあった。しかし、小規模な調査にとどまっていた。そこで、スウェーデンのカロリンスカ研究所医科大学の協力を得て、同国の医療制度に登録されている約430万人の診療データを対象に、脳腫瘍の発症リスクと学歴や収入、職業、婚姻状況などとの関連を調べた。
調査期間中の1993~2010年に約1万3000人が脳腫瘍になったが、学歴や収入などとの違いによって明らかにリスクに差があることがわかったという。たとえば、脳腫瘍の4分の1を占める「グリオーマ(神経膠腫)」の場合、大学卒の人は中学卒の人に比べ、発症リスクは男性で19%、女性で23%高かった。また、職業の比較では、専門職や管理職の人は単純労働の人に比べ、発症リスクは20~26%高く、特に男性の場合は年収が多いほどリスクが高まる傾向が見られた。
また、脳腫瘍全体を致死率が高いものから良性のものまで、悪性度に応じて3つのタイプに分類して比較すると、致死率が一番高い脳腫瘍で、学歴や収入との関連が最も強かった。つまり、社会的地位が高い人ほど悪性の脳腫瘍になりやすいというわけだ。