イギリスのヨーロッパ連合(EU)離脱がほぼ確実となり、ここにきて安倍首相の「リーマン発言」への再注目が起きている。およそ1か月前の主要国首脳会議(G7、伊勢志摩サミット)で飛び出した、世界経済の現状とリーマン・ショック前の類似点を指摘する発言だ。
イギリスのEU離脱が世界経済に及ぼす影響は計り知れず、2016年6月24日、円は一時1ドル=100円を突破して急騰。日経平均株価も23日に比べ1200円も下落した。金融危機の懸念も高まっており、ネットで「(安倍首相は)未来から来てるの?」との声も上がるが、安倍首相自身がいったん撤回しているだけに、結果としての符合を皮肉る声も起きている。
「そうした発言はなかった」
安倍首相は16年5月26日午後、G7などの場で、世界経済の現状認識についてリーマン・ショック前後と現在の経済指標を比較したグラフを並べ、類似点を指摘した。そして、翌27日の議長会見では「世界経済の成長率は昨年、リーマン・ショック以来、最低を記録しました」などと述べ、終了後の会見でも「リーマン・ショック」の言葉を繰り返し使った。
こうした発言はメディアでも頻繁に取り上げられ、野党議員はツイッターで
「失敗したアベノミクスではなく消費増税先送りはG7の共通認識との思惑は国際会議軽視だ」(5月27日、民進党・蓮舫参院議員)
「自分の経済失政の責任を『世界経済』に転嫁するとはあまりにも無責任だ」(5月27日、共産党・志位委員長)
「(安倍首相の発言で)お得意の茶番劇の開幕である」(5月27日、生活の党・小沢一郎代表)
と厳しい批判を展開した。
批判を受けてか、安倍首相は30日の自民党役員会で一転、「わたしはリーマン・ショック前の状況に似ているとの認識を示したとされるが、全くの誤りだ」と軌道修正。世耕弘成官房副長官は31日の記者会見で「そうした発言はなかった」と事実上、発言を撤回した。
「安倍首相、タイムリープ説」
しかし、それから1か月後、イギリスのEU離脱がほぼ確実となったことで金融危機のリスクはかつてなく高まっている。EU内でドイツに次ぐ経済規模を持つイギリスが離脱すれば、EUの経済規模は大幅に縮小する。国民投票で「離脱派」が勝利した24日、日経平均株価も23日の終値から1200円以上値下がりし、16年の最安値を更新した。世界経済の先行きはますます不透明となっている。
そんな状況の中、ツイッターでは
「本当は未来から来てるのか?」
「世界恐慌が起こる可能性を予期できていたのか」
「安倍首相、タイムリープ説」
と安倍首相の「リーマン発言」を評価する声があがった。
ただ、そもそも各国首脳にもリーマンショック前という認識はなかったうえ、安倍首相自身が発言を事実上撤回していることから、
「バカだなあリーマン発言撤回しなけりゃ良かったのに」
と発言撤回を皮肉る声も沸き起こっている。