手腕により注目集まる
今シーズンの巨人は高橋由伸新監督でスタートした。昨(15)年の野球トバク問題などで、この名門球団は威厳を失った。名誉挽回を新監督に託した。
「勝つことで汚名を返上したい」
高橋監督の決意だった。確かにそれが信頼を取り戻す最良の手段だろう。その高橋監督、見た目には冷静なのだが、逆の見方もある。担当記者の話だ。
「明るさが感じられない。コメントも地味で他人事の感じ」
長嶋茂雄監督や王貞治監督は勝負にのめり込み、興奮状態にあった。試合が終わると、目が血走っていた。試合中のベンチの緊張感はテレビ画面でも感じ取れた。
慶応ボーイらしい高橋監督はそれなりの魅力はあるのだが、勝負どころでは迫力が求められる。常勝を期待され、注目を浴びる巨人監督のつらいところである。
間もなく夏場である。戦力の不安は依然としてつきまとう。これまで投手陣が頑張ってきたが、投手にとって「バテる」という魔の季節を乗り切れるか。6月22日に捕手の小林誠が左肩骨折で離脱した。守りの要だけに影響は出るだろう。
打線は得点力が低い。阿部慎之助の復帰で厚みが増したものの、その効果が持続しているとはいえない。打率1位の坂本勇人をはじめ村田修一、長野久義ら主軸の成績はいいだけに不思議である。外国人選手の存在がその原因と思われる。
交流戦終了時点で首位広島と6ゲーム差の2位。3ゲーム差を縮めるには1か月かかるのが普通といわれるから、半端な差ではない。投手陣が崩れたら一気に下位に転落する。高橋監督の手腕に、より注目が集まるのは必至だ。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)